経口避妊薬は、市販後50年で約10万人の卵巣癌死を予防

提供元:ケアネット

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公開日:2008/02/07

 

経口避妊薬の使用により卵巣癌の発生率が低下することが知られている。卵巣癌は若年女性では少なく、加齢とともに増加するため、発生率低下の公衆衛生面への影響は使用中止後のリスク低下効果の持続時間に依存するという。Collaborative Group on Epidemiological Studies of Ovarian Cancerの研究グループは45の疫学研究のデータを解析、経口避妊薬は市販後約50年の間に約20万人の女性の卵巣癌罹患を予防し、約10万人が卵巣癌による死亡から救われたと推計している。Lancet誌2008年1月26日号掲載の報告。

使用状況と卵巣癌相対リスクを推計




21か国の45の疫学研究から2万3,257人の卵巣癌症例と8万7,303人の非卵巣癌(対照)のデータを収集し解析を行った。経口避妊薬の使用状況と卵巣癌の相対リスクを推計し、さまざまな因子で層別化した。

経口避妊薬の使用経験者は症例群が7,308人(31%)、対照群が3万2,717人(37%)であり、平均使用期間はそれぞれ4.4年、5.0年であった。卵巣癌診断年の中央値は1993年、診断時の平均年齢は56歳であった。

今後数10年にわたり、年間3万人以上の卵巣癌罹患を予防




経口避妊薬の使用期間が長いほど卵巣癌のリスクが低下した(p<0.0001)。また、このリスク低下効果は使用中止後30年以上が経過しても持続していたが、中止後10年までは29%、10~19年では19%、20~29年では15%と漸減した。

経口避妊薬のエストロゲン含有量は年代によって異なり、1960年代は1980年代の2倍以上であった。しかし、60年代、70年代、80年代のリスク低下率は使用期間に応じて同等であり、エストロゲン量とは関連しなかった。

組織型別の解析では、粘液性癌(全体の12%)は経口避妊薬の影響をほとんど受けていなかったが、他の組織型は同等のリスク低下率を示した。

高所得国では、経口避妊薬を10年間使用した場合、75歳までの卵巣癌罹患率は100人当たり1.2から0.8人に、卵巣癌による死亡率は0.7から0.5人に低下すると推計された。これは、5,000人年当たり2人の罹患および1人の死亡が予防されることになる。

研究グループは、「経口避妊薬の長期的な卵巣癌予防効果を確認した。市販後約50年で約20万人の卵巣癌罹患および約10万人の卵巣癌死を予防したと推計される」と結論、「卵巣癌罹患予防数は、今後、数10年以上にわたり、少なくとも年間3万人にのぼる」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)