メタ解析で明らかになったHIV/AIDSにおける発癌リスク

提供元:ケアネット

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公開日:2007/07/19

 

HIV治療の進歩により、HIV感染後の生命予後は以前に比べだいぶ長くなった。そこで近年、関心の高まりを見せているのが、「発癌リスク」などHIVの長期感染に伴う合併症の問題だ。元来、免疫低下が直接関係する癌としてHIV感染者やAIDS患者で指摘されてきたのは、カポジ肉腫、非ホジキン性リンパ腫、子宮癌の3種のみだが、臓器移植後の免疫低下患者では、広範囲の癌種の発症増加が報告されている。

 このような中、7月7日付Lancet誌で報告されたオーストラリアにあるニュー・サウス・ウェールズ大学のGrulich氏らの研究では、HIV/AIDSを対象にしたコホート試験と、臓器移植のレシピアントを対象にしたコホート試験とをメタ解析した結果、臓器移植レシピアント群だけでなくHIV/AIDS群においても、免疫低下が主因と考えられる多種の感染症由来の癌発症リスクが増大していることが明らかにされた。

HIV/AIDS群でも20種類の癌が増加、多くの主因は免疫低下



同研究では、これまでに報告されている文献の中から、HIV/AIDSを対象にしたコホート研究7件(合計444,172例)と、臓器移植のレシピアントを対象にしたコホート研究5件(合計31,977例)を抽出し、ともに免疫低下を有する双方の集団において、癌種や発癌状況に関するメタ解析を行った。その結果、HIV/AIDS群においても臓器移植レシピアント群においても、検討した28種類の癌種のうち20種類の発症率が、対照群より有意に高いことが明らかになった。

HIV感染症の長期合併症として危惧される感染症関連の各種癌



これら発症増加の見られた癌のほとんどは、epstein-Barrウイルス(EBV)が関連するホジキン性リンパ腫や非ホジキン性リンパ腫、ヒト・ヘルペスウイルスが関連するカポジ肉腫、B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスが関連する肝癌、ヘリコバクター・ピロリ(H. pylori)が関係する胃癌など、何らかの感染症が関与すると考えられる癌だったという。

以上のように、HIV/AIDS群と臓器移植レシピアント群という異なる免疫低下集団において同様の発癌パターンが見られたことから、Grulich氏らは「これらの癌増加の主要リスクファクターは、『免疫低下』だと考えられる」と考察しており、HIV感染症の長期的合併症として今後、感染症関連の癌の重要性が増大していくだろうと喚起している。