プロバイオティクスは、「十分な量を投与された場合に宿主の健康にベネフィットをもたらす生きた微生物」と定義され、Streptococcus thermophilus、腸球菌種、サッカロミセス種、多くの種の乳酸菌やビフィズス菌などがある。感染性および抗生物質に起因する下痢などの消化器症状に、プロバイオティクスが有効であることを示すエビデンスが蓄積されつつある。
インペリアル・カレッジ・ロンドン医学部栄養学のMary Hickson氏らは、抗生物質およびClostridium difficileによる下痢の予防におけるプロバイオティクス飲料の有効性を評価するためのプラセボ対照無作為化試験を実施した。BMJ誌6月29日付オンライン版、7月14日付本誌掲載の報告から。
高齢入院患者がカゼイ菌などを含むプロバイオティクスを飲用
対象は、ロンドン市内の3施設に入院中で抗生物質の投与を受けている高齢患者135例(平均年齢74歳)。これらの症例が、抗生物質投与中および投与終了後1週間、カゼイ菌、ブルガリア菌、
Streptococcus thermophilusを含むプロバイオティクス飲料100g(97mL)を1日2回飲用する群(69例)あるいは長期保存用の滅菌ミルクセーキ(プラセボ)を飲用する群(66例)に無作為に割り付けられた。
評価可能例は113例(プロバイオティクス群57例、プラセボ群56例)であった。主要評価項目は抗生物質に関連する下痢の発生とし、副次評価項目は
difficile毒素および下痢の発現とした。
ルーチンな飲用により抗生物質関連の下痢の発現が低下、医療費抑制も
抗生物質に関連する下痢の発生率は、プロバイオティクス群がプラセボ群に比し有意に低かった(12 vs. 34%、p=0.007)。プラセボ群に対するプロバイオティクス群のオッズ比は0.25[95%信頼区間:0.07-0.85]と有意であった。抗生物質による下痢の予測因子として、血漿ナトリウム値上昇(オッズ比:0.84、95%信頼区間:0.75-095)、血清アルブミン値上昇(オッズ比:0.82、95%信頼区間:0.73-0.92)が挙げられた。また、C.
difficileによる下痢の発現もプロバイオティクス群で有意に低下していた(0 vs. 17%、p=0.001)。
プロバイオティクス飲料は抗生物質およびC.
difficileによる下痢の発生を低下させることが明らかとなった。Hickson氏は、「プロバイオティクス飲料はコンプライアンスが良好であり、ルーチンに飲用することで50歳以上の症例の下痢の発生を予防するため医療費が抑制され、死亡率も低下する可能性がある」としている。
(菅野 守:医学ライター)