食後高トリグリセリド(TG)血症はアテローム性動脈硬化症を引き起こす重要な役割を果たす可能性がある、など論争の的になっているTG値と心血管疾患との関連について、アメリカ・ボストンのブリガム&ウーマン病院Sandeep Bansal氏らの研究グループが研究報告を行った。JAMA誌7月18日号の掲載報告から。
米国女性26,509例を対象とした前向き研究
Bansal氏らが行ったのは、空腹時と非空腹時それぞれのTG値と将来的な心血管イベントリスクとの関連を評価するというもの。Women's Health Studyに健康状態良好で参加登録した米国女性26,509例(1992年11月~1995年7月の間に登録、追跡調査期間中央値11.4年)を対象とした前向き研究で、TG値は、登録時の血液サンプル測定値が用いられた(空腹時群20,118例、非空腹時群6,391例)。主要評価項目は心血管イベント(非致死的心筋梗塞、非致死的虚血性発作、冠動脈再建または心血管死亡)の発生ハザード比。
追跡期間中央値11.4年の間に心血管イベントを経験した参加者は1,001例(非致死的心筋梗塞276例、虚血性発作265例、冠動脈再建628例、心血管死亡163例)で、総発生率は3.46/1,000人年だった。
空腹時TG値は独立した関連性を示さない
空腹時群および非空腹時群の各TG値からの心血管イベントの予測は、年齢、血圧、および喫煙とホルモン療法について加味した補正後モデルにおいては、いずれも可能だった。
しかし、さらに総コレステロール、HDLコレステロール、インスリン抵抗性を加味した補正後モデルでは、空腹時群TG値と心血管イベントとの関連は弱まってしまった。これに対して非空腹時群では強い関連を示し続けた。
また2次解析の結果、食後2~4時間での測定TG値が、最もよく心血管イベントとの関連を示し、空腹時間が長くなるほど減少することも明らかとなった。
これら結果からBansal氏らは、女性において、非空腹時TG値は、従来の心血管リスク因子や他の脂質レベル、インスリン抵抗性マーカーとは別個の、心血管イベントとの関連を示す強力な因子であると結論づけた。
なお同日号で、「男性および女性における非空腹時TG値と心筋梗塞、虚血性心疾患および死亡とのリスク」と題するデンマークからの報告も寄せられており、合わせて読むと知見が深まる。
(武藤まき:医療ライター)