認知機能の低下は45歳からすでに始まっている

提供元:ケアネット

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公開日:2012/02/03

 



認知機能の低下は中年期(45~49歳)にはすでに始まっていることが、フランス国立保健医学研究所(INSERM)のArchana Singh-Manoux氏らが行ったWhitehall II試験で示された。認知機能は加齢に伴って低下し、認知状態の障害は認知症に顕著な特徴とされる。認知機能低下の開始年齢は知られていないが、最近の文献レビューでは60歳以前に低下が始まることを示すエビデンスはほとんどないという。BMJ誌2012年1月21日号(オンライン2012年1月5日号版)掲載の報告。

年齢が認知機能低下に及ぼす影響を評価する前向きコホート試験




Whitehall II試験は、年齢が認知機能の低下に及ぼす影響を評価するために、中年層の縦断的データから10年間の認知機能の低下を推察し、さらに横断的データを用いて各年齢層の比較を行うプロスペクティブなコホート試験である。

対象はロンドン市の公務員(事務職)で、試験開始時の1985~1988年に試験参加への招聘に応じたのは1万308人(73%)であった。認知機能の検討は1997~1999年に開始され、この時点で45~70歳であった男性5,198人と女性2,192人が解析の対象となった。解析は、5つの年齢層(45~49歳、50~54歳、55~59歳、60~64歳、65~70歳)に分けて行った。

主要評価項目は、以下の5つの認知機能の指標とし、10年間に3回の評価を行った。1)記憶力(memory):単語短期記憶テスト、2)論理的思考力(reasoning):Alice Heim 4-I(AH 4-I)思考力テスト、3)語彙力(vocabulary):Mill Hill語彙力テスト、4)音素流暢性(phonemic fluency):1分間に“S”で始まる単語をできるだけ多く書き留めるテスト、5)意味流暢性(semantic fluency):1分間にできるだけ多くの動物の名前を書き留めるテスト。
45~49歳の論理的思考力が10年間で3.6%低下




語彙力を除き、認知スコアは5つの年齢層のすべてで低下し、高齢になるほど低下速度が速かった。

ベースライン時に45~49歳の男性は、10年間で論理的思考力が3.6%低下し、65~70歳の男性は9.6%低下した。女性にも同様の傾向がみられ、45~49歳の年齢層は10年間で3.6%の低下、65~70歳は7.4%の低下を示した。

女性では、横断的解析が、認知機能に及ぼす年齢の影響を過大評価していることが示唆された。例えば、45~49歳の女性の論理的思考力は、縦断的解析では3.6%の低下であったが、横断的解析では11.4%低下していた。教育歴で調整すると、縦断的解析では年齢の影響はほとんどなくなったが、横断的解析では実質的な認知機能の低下が認められた。男性ではこのような傾向はなかったことから、女性では教育の差を考慮する必要がある。

著者は、「認知機能の低下は中年(45~49歳)ですでに始まっていることが確かめられた」と結論づけ、「年齢に関連する認知機能の低下は、横断的解析では正確に評価できない可能性がある」としている。

(菅野守:医学ライター)