硫酸マグネシウム、動脈瘤性クモ膜下出血の予後を改善せず:MASH-2試験

提供元:ケアネット

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公開日:2012/07/19

 

 動脈瘤性クモ膜下出血に対する硫酸マグネシウムの静脈内投与は臨床予後を改善しないことが、オランダ・ユトレヒト大学医療センターのSanne M Dorhout Mees氏らが実施したMASH-2試験で示された。動脈瘤性クモ膜下出血は予後不良であり、1ヵ月後の死亡率は27~44%、過去10年で死亡率は低下傾向にあるものの生存者の20%は介助なしでは生活ができない。動脈瘤性クモ膜下出血では、発症後4~10日にみられる遅発性脳虚血が不良な予後の重要な原因であり、神経保護薬である硫酸マグネシウムは遅発性脳虚血を抑制したり、その予後を改善することで、クモ膜下出血そのものの予後を改善する可能性があるという。Lancet誌2012年7月7日号(オンライン版2012年5月25日号)掲載の報告。

硫酸マグネシウムの効果を無作為化プラセボ対照第III相試験で評価

 MASH-2試験は、硫酸マグネシウムによる動脈瘤性クモ膜下出血の予後改善効果を検証する無作為化プラセボ対照第III相試験。

 脳のCT画像で動脈瘤性クモ膜下出血が確認され、出血から4日以内に参加施設に入院した18歳以上の患者を対象とした。これらの患者が、硫酸マグネシウム(64mmoL/日、20日間)を静脈内投与する群あるいはプラセボ群に無作為化に割り付けられた。腎不全や体重が50kg未満の患者は除外された。

 患者、担当医、予後の評価やデータ解析を行う研究者には治療割り付け情報がマスクされた。主要評価項目は、発症から3ヵ月後の不良な予後(修正Rankinスケール[mRS]でスコア4~5と定義)および死亡とした。以前に行われたメタ解析に本試験のデータを加えて再解析を行った。

硫酸マグネシウムは改善効果がないためルーチン投与は推奨されない

 2004年4月~2011年9月までに、3ヵ国(オランダ、スコットランド、チリ)の8施設から1,204例が登録され、1,200例(マグネシウム群:604例、プラセボ群:596例)が解析の対象となった。

 不良な予後の割合は、マグネシウム群が26.2%(158/604例)、プラセボ群は25.3%(151/596例)であり、両群間に有意な差はなかった(リスク比[RR]:1.03、95%信頼区間[CI]:0.85~1.25)。

 無症状の患者の割合(7.6% vs 7.7%、RR:0.99、95%CI:0.67~1.46)、mRSのスコア(0:46例 vs 46例、1:222例 vs 210例、2:124例 vs 142例、3:54例 vs 47例、4:42例 vs 44例、5:25例 vs 22例、死亡:91例 vs 85例)も、両群間で有意差は認めなかった(p=0.95)。

 不良な予後に関するサブ解析(性別、年齢[55歳以下 vs 55歳以上]、入院時の病態[WFNS基準:Grade <4 vs Grade 4/5]、治療法[コイル塞栓術 vs クリッピング術]、低マグネシウム血症に対するマグネシウム投与の有無)でも、有意な差はみられなかった。

 これらのデータを含む7試験2,047例のメタ解析では、動脈瘤性クモ膜下出血発症後の不良な予後の抑制効果はマグネシウム群とプラセボ群で同等であった(RR:0.96、95%CI:0.84~1.10)。

 著者は、「硫酸マグネシウムの静脈内投与は動脈瘤性クモ膜下出血の臨床予後の改善効果がないため、ルーチンの投与は推奨されない」と結論づけている。

(医学ライター 菅野 守)