血圧や血糖モニタリングなど遠隔健康管理(telehealth)は慢性疾患患者の、緊急入院および死亡の減少に結びつくことが報告された。英国ヘルスケア指針の独立検証機関であるNuffield TrustのAdam Steventon氏らが、英国保健省による資金提供プロジェクトの無作為化試験「Whole System Demonstrator」を解析した結果による。同試験はtelehealthとtelecareの統合アプローチの有効性について検証することを目的とする、英国保健省プロジェクトの多地域クラスター無作為化試験だった。BMJ誌2012年7月14日号(オンライン版2012年6月21日号)掲載報告より。
遠隔健康管理介入群と通常ケア群に無作為化し12ヵ月間追跡
試験は、居宅ベースの遠隔健康管理の介入がその後の健康や死亡に及ぼす影響を通常ケアと比較することを目的とし、イングランドの3地域(コーンウォール、ケント、ニューアム)を対象に行われた。
介入群または通常ケア(対照)群の無作為化は一般診療所単位で行い、同地域179件が参加。それら診療所を通じて2008年5月~2009年11月の間に、糖尿病、慢性閉塞性肺疾患または心不全を有する3,230例が集められた。
遠隔健康管理群には、患者-医師間の診断と指導管理の一部が遠隔通信で行われ、通常ケア群には遠隔健康管理以外の各居住地域で利用可能な医療サービスが行われた。
主要評価項目は、試験期間の12ヵ月間に入院した患者の割合とした。
なお、ベースラインでの被験者特徴は両群で類似していた。
入院、死亡が有意に低下
結果、12ヵ月の追跡期間中の入院の割合は、介入群が対照群と比較して有意に低かった(オッズ比:0.82、95%信頼区間:0.70~0.97、p=0.017)。
同12ヵ月間の死亡率も、介入群(4.6%)が対照群(8.3%)と比べて有意に低かった(同:0.54、0.39~0.75、p<0.001)。
入院、死亡に関する両群間の差は、調整後も有意なままだった。
1人当たりの緊急入院の平均回数についても、両群間に差が認められた(粗率で介入群0.54、対照群0.68)。これらの差は、未補正後は有意で(発生率比:0.81、95%信頼区間:0.65~1.00、p=0.046)、予測リスクスコアで補正後も有意であったが(p=0.011)、ベースライン特性で補正後は有意差は認められなかった(p=0.056)。また、緊急入院の両群の差は、試験開始直後で最も大きく、特に対照群での増大が認められた。この増大の理由について研究グループは、「明らかではないだが、試験補充プロセスが影響した可能性がある」とコメントしている。
入院期間の長さも、介入群のほうが対照群よりも短かった[1人・床当たり平均4.87日対5.68日、相乗平均差:-0.64、95%信頼区間:-1.14~-0.10、p=0.023(補正後も有意差は維持)]。
コストや病院類型などについては、総じて両群間の有意差は認められなかった。