小学生の貧血、校長への報奨金で改善

提供元:ケアネット

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公開日:2012/08/31

 

 健康サービスの提供者に、助成金のほかに成果に応じた報奨金を支払うことで、子どもの貧血が改善される可能性があることが、米国スタンフォード大学医学部のGrant Miller氏らが中国の農村地域で行った調査で示された。開発途上国には、健康状態の改善に寄与する安価で優れた効果を持つ技術やサービスはあるものの、それを遂行し普及させる技能が一般に弱いとされる。目標の達成に対して、その方法を問わずに支払われる報奨金は、サービスの提供における創造性や技術革新の促進に向けた動機づけを強化する可能性があるが、開発途上国ではこれまで、健康アウトカムに直接的に準拠した、能力に応じた報奨金の有効性の評価は行われていなかったという。BMJ誌2012年8月18日号(オンライン版2012年7月27日号)掲載の報告。

報奨金の効果をクラスター無作為化試験で評価
研究グループは、中国農村地域の子どもの貧血の改善における、健康サービス提供者への職能に応じた報奨金の支払いの効果を評価するために、クラスター無作為化試験を実施した。

対象は、無作為に選ばれた中国北西部の農村地域の小学校72校(3,553人、4~5年生、9~11歳)。これらの学校が、以下の4つの群に無作為に割り付けられた。1)介入を行わない群、2)校長が貧血に関する情報のみを受け取る群(情報群)、3)校長が貧血の情報と無条件の助成金を受け取る群(助成金群)、4)校長が貧血情報と助成金に加え、生徒の貧血が改善した場合に報奨金を受け取る群(報奨金群)。

助成金は、学校運営予算だけでは貧血対策費が賄えない学校に生徒1人当たり1日1.5円(赤身肉55~85gを購入できる)が拠出された。報奨金は、貧血生徒が非貧血と診断されると1人当たり150円が校長に支払われた(貧血生徒が半減した場合、月給の約2ヵ月分に相当)。

非介入群に27校(1,623人)、情報群に15校(596人)、助成金群に15校(667人)、報奨金群には15校(667人)が割り付けられた。貧血はヘモグロビン濃度<115g/L(<11.5g/dL)と定義した。

報奨金群で貧血が24%低下
生徒の平均ヘモグロビン濃度は、非介入群に比べ情報群が1.5g/L(95%信頼区間[CI]:-1.1~4.1、p=0.245)上昇し、助成金群は0.8g/L(同:-1.8~3.3、p=0.548)、報奨金群は2.4g/L(同:0~4.9、p=0.054)上昇した。報奨金群では、平均ヘモグロビン濃度の2.4g/Lの上昇により貧血生徒が24%減少した。

約20%の学校が本試験とは別の報奨金の支払い制度に参加していたが、情報群と報奨金群ではこれらの制度との相互作用が認められた。すなわち、既存の報奨金制度に参加していない学校に比べ、参加校の情報群ではヘモグロビン濃度が9.8g/L(95%CI:4.1~15.5、p=0.01)、報奨金群では8.6g/L(同:2.1~15.1、p=0.07)上昇していた。

著者は、「報奨金の支払いは、健康アウトカムの改善に中等度の効果を有することが示唆された」と結論しており、「他の動機づけや既存の報奨金との相互作用を把握することが重要であり、これを理解しないとせっかくの増強された効果を見逃すことになる」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)