変形性関節症と強い関連を示す5つの遺伝子座の存在が、英国・Wellcome Trust Sanger InstituteのEleftheria Zeggini氏らarcOGEN Consortium and arcOGEN Collaboratorsの検討で明らかとなった。変形性関節症は世界的に最も高頻度にみられる関節炎で、高齢者における痛みや身体障害の主要原因であり、その医療経済的な負担は肥満の増加や加齢に比例して増大する。変形性関節症には強力な遺伝要因がみられるが、以前に行われた遺伝子解析はサンプル数が少なく、表現型の不均一性のためその限界が指摘されていた。Lancet誌2012年9月1日号(オンライン版2012年7月3日号)掲載の報告。
関連遺伝子領域を重症患者のゲノムワイド関連研究で探索
arcOGEN(Arthritis Research UK Osteoarthritis Genetics)試験は、レトロスペクティブおよびプロスペクティブに選出された非血縁の重症変形性関節症患者7,410人(80%が関節全置換術施行例、非血縁対照1万1,009人)を対象に、英国で実施された大規模な症例対照ゲノムワイド関連研究(GWAS)。
arcOGEN試験の結果をdiscovery dataとし、アイスランド(deCODE試験)、エストニア(EGCUT試験)、オランダ(GARP試験、RSI試験、RSII試験)、英国(TwinsUK試験)から収集した最大7,473人の非血縁患者と4万2,938人の対照において、最も関連性が高いと考えられる遺伝子領域の同定を目的に再現性の検討を行った(replication data)。さらに、discovery dataとreplication dataのメタ解析を実施した。すべての患者と対照が欧州の家系だった。
治療介入に適したシグナル伝達経路の同定の可能性も
変形性関節症との有意な関連を示す5つの遺伝子座[二項検定:p≦5.0×10
-8]と、これらよりも閾値がわずかに低い3つの遺伝子座を同定した。
変形性関節症と最も強い関連を示したのは第3染色体のrs6976[オッズ比:1.12、95%CI:1.08~1.16、p=7.24×10
-11]で、rs11177との完全な連鎖不平衡が確認された。このSNPには、ヌクレオステミンのコード遺伝子であるGNL3(Guanine Nucleotide-binding protein-Like 3)内のミスセンス多型がコードされ、ヌクレオステミンは変形性関節症患者の軟骨細胞で高度に発現していた。
そのほか、第9染色体のASTN2近傍、第6染色体のFILIP1とSENP6の間、第12染色体のKLHDC5とPTHLHの近傍、第12染色体CHST11近傍の領域が、変形性関節症と有意な関連を示した。体重は変形性関節症の強力なリスク因子だが、体重調節に関与するFTO遺伝子内にも、変形性関節症と密接な関連を示す領域がみつかった。
著者は、「これらの知見は、関節炎の遺伝子研究に本質的な洞察をもたらし、治療介入に適した新たな遺伝子シグナル伝達経路の同定に道を開くものだ」と結論づけている。
(菅野守:医学ライター)