静脈性下腿潰瘍、新規のスプレー式細胞療法が有効

提供元:ケアネット

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公開日:2012/09/27

 

 静脈性下腿潰瘍の治療として、新たに開発されたスプレー式の細胞療法(HP802-247)が有効なことが、米国・マイアミ大学Leonard M Miller医学校のRobert S Kirsner氏らの検討で示された。静脈性下腿潰瘍患者の多くは現在の標準治療では治癒しないという。HP802-247は、増殖を停止させた同種新生児角化細胞と線維芽細胞を含むスプレー薬で、静脈性下腿潰瘍の新たな細胞療法として開発が進められている。Lancet誌2012年9月15日号(オンライン版2012年8月3日号)掲載の報告。

5群を比較するプラセボ対照無作為化第II相試験
研究グループは、慢性静脈性下腿潰瘍に対するHP802-247の有効性と安全性を評価するために、種々の細胞濃度と投与期間を設定した多施設共同二重盲検プラセボ対照無作為化第II相試験を実施した。

2009年6月15日~2011年5月5日までに、米国とカナダの28施設から1~3ヵ所の潰瘍(部位:膝~足首、大きさ:2~12cm2[腱、筋肉、骨には及んでいない]、罹患期間:6~104週)を有し、ドップラー超音波検査で静脈逆流が確認され、動脈流は正常な18歳以上の成人外来患者が登録された。

これらの患者が、HP802-247を5.0×106細胞/mL(7日ごと)、同(14日ごと)、0.5×106細胞/mL(7日ごと)、同(14日ごと)を投与する群または賦形剤投与群(プラセボ群)に無作為に割り付けられた。5つの群のすべての患者に4層圧迫包帯が適用され、毎週1回の外来受診時に取り替えられた。

試験資金提供者(Healthpoint Biotherapeutics社)、試験監視者、統計学者、担当医、参加施設職員、患者には治療割り付け情報がマスクされた。主要評価項目は12週における創傷範囲の平均変化率とし、初回治療前に試験とは無関係の原因で死亡した1例を除いてintention-to-treat解析を行った。

0.5×106細胞/mLの14日ごとの投与で12週後に創傷が約16%縮小
228例が登録され、5.0(/7日)群に45例(平均年齢61.8歳、男性56%)、5.0(/14日)群に44例(同:59.8歳、50%)、0.5(/7日)群に43例(同:62.6歳、67%)、0.5(/14日)群に46例(同:61.7歳、57%)、プラセボ群には50例(同:62.1歳、66%)が割り付けられた。205例が治療を完遂した。

12週後の創傷範囲の平均縮小率はプラセボ群よりもHP802-247投与群が有意に良好で(p=0.0446)、なかでも0.5(/14日)群が最も優れていた(-15.98%、95%信頼区間[CI]:-26.41~-5.56、p=0.0028)。5.0(/7日)群の縮小率は-11.7%(-22.2~-1.17、p=0.0295)、5.0(/14日)群は-7.60%(-18.2~2.99、p=0.16)、0.5(/7日)群は-9.16%(-19.8~1.44、p=0.09)だった。

有害事象の発現状況は5群で同等で、発生率が5%を超えたのは新規皮膚潰瘍と蜂巣炎(評価対象外の創傷部位)のみだった。

著者は、「静脈性下腿潰瘍は、再生医療の導入を要することなく、同種新生児角化細胞と線維芽細胞のスプレー薬で治療可能であり、至適用量は0.5×106細胞/mLの14日ごとの投与であることが確認された」と結論し、「至適用量以外のレジメンにもある程度のベネフィットが認められており、HP802-247は静脈性下腿潰瘍治療の標準化に向けた大規模な無作為化試験の候補薬剤として有望と考えられる」と指摘する。

(菅野守:医学ライター)