重症患者において、低血糖は死亡リスクを1.4~2.1倍増大することが明らかにされた。死亡リスクは中等症低血糖よりも重症低血糖のほうがさらに増大し、血液分布異常性ショックによる死亡との関連が最も強かった。オーストラリア・シドニー大学のSimon Finfer氏らにより行われたNormoglycemia in Intensive Care Evaluation-Survival Using Glucose Algorithm Regulation(NICE-SUGAR)試験の結果で、これまで重症患者における低血糖が死亡に結びつくのかどうかは明らかではなかった。なお、同関連の因果関係については、この試験では明らかにはならなかった。NEJM誌2012年9月20日号掲載より。
強化血糖コントロール群の8割が、中程度以上の低血糖
研究グループは、集中治療室(ICU)で治療を受けていた6,026例を無作為に2群に分け、一方には強化血糖コントロールを、もう一方には標準血糖コントロールを行った。被験者のうち、中等症低血糖(41~70mg/dL)と重症低血糖(40mg/dL以下)を発症した人について、それぞれ死亡リスクを調べ、低血糖を発症しなかった人と比較した。
その結果、中等症低血糖が認められたのは被験者の45%にあたる2,714例で、そのうち2,237例(82.4%)が強化血糖コントロール群(同群全体の74.2%)であり、477例が標準血糖コントロール群(同群全体の15.8%)だった。
被験者のうち重症低血糖だったのは、3.7%にあたる223例で、そのうち208例(93.3%)が強化血糖コントロール群(同群全体の6.9%)、15例が標準血糖コントロール群(同群全体の0.5%)だった。
死亡リスク、中等症低血糖で1.4倍、重症低血糖で2.1倍に
低血糖が認められなかった3,089例のうち、死亡したのは726例(23.5%)だった。一方で、中等症低血糖を有した死亡は774例(28.5%)、重症低血糖を有した死亡は79例(35.4%)だった。中等症または重症低血糖の認められた人の低血糖が認められなかった人に対する死亡に関するハザード比は、それぞれ1.41(95%信頼区間:1.21~1.62、p<0.001)、2.10(同:1.59~2.77、p<0.001)だった。
なかでも、中等症低血糖が1日超認められた人は、1日の人に比べ、死亡リスクは有意に高くなる関連がみられた(p=0.01)。また、インスリン非投与で重症低血糖の認められた人の死亡リスクも高く、低血糖の認められなかった人に対する死亡に関するハザード比は3.84(同:2.37~6.23、p<0.001)だった。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)