慢性腎臓病(CKD)の測定マーカーである推定糸球体濾過量(eGFR)とアルブミン尿の、年齢階層別にみた予後との関連について調べた結果、eGFR低値と高アルブミン尿は、年齢を問わず死亡および末期腎不全(ESRD)と独立した関連がみられることが、ノルウェー科学技術大学のStein I. Hallan氏らCKD-PC(CKDの予後に関する多施設共同研究)が約205万人の個人データをメタ解析した結果、報告した。ただしeGFR低値のリスクは高齢であるほど弱まるなど、高齢者では両値との関連について、絶対リスクは高いが相対リスクは低いことが示されたという。CKDは高齢の患者に多くみられるが、eGFR低値と高アルブミン尿のリスクについて、全年齢にわたるのかについては議論の的となっていた。JAMA誌2012年12月12日号掲載より。
相対リスクと絶対リスクを解析
研究グループは、臨床的リスクがあるeGFRとアルブミン尿について、年齢階層別の影響(相互作用)の違いがあるのかを、相対リスクと絶対リスクを調べて評価した。アジア、オーストラリア地域、ヨーロッパ、南北アメリカ地域から、33コホート(一般集団または血管系疾患のハイリスク集団)および13コホート(CKD集団)の計205万1,244人の参加者データについて、個人レベルのメタ解析を行った。データは1972~2011年の間、平均追跡期間5.8年(範囲、0~31年間)にわたるものであった。
主要評価項目は、eGFRと蛋白尿各値の、死亡およびESRDのハザード比(HR)(性、人種、心血管疾患、糖尿病、収縮期血圧、コレステロール値、BMI、喫煙の有無について補正)とした。絶対リスクは、HRと平均罹患率から推計した
全年齢層で、死亡およびESRDリスクと関連
結果、全年齢層で、死亡(11万2,325例)およびESRD(8,411例)のリスクは、eGFR低値とアルブミン尿高値で高かった。
一般・ハイリスク集団では、死亡に関するeGFR低値の相対リスクは、加齢に伴い減少することが認められた。たとえば、eGFR値45mL/分/1.73m
2 対 80mL/分/1.73m
2の補正後HRは年齢階層別に、18~54歳群3.50(95%CI:2.55~4.81)、55~64歳群2.21(同:2.02~2.41)、65~74歳群1.59(同:1.42~1.77)、75歳以上群1.35(同:1.23~1.48)であった(年齢相互作用のp<0.05)。
一方で、同年齢階層別にみた絶対リスク(1,000人・年当たり過剰死亡)は、それぞれ9.0(同:6.0~12.8)、12.2(同:10.3~14.3)、13.3(同:9.0~18.6)、27.2(同:13.5~45.5)で、高齢であるほど高かった。
高アルブミン尿に関しては、絶対リスクは高齢であるほど高かったが、相対リスクについては、年齢とともに低下をする確証は得られなかった。アルブミン/クレアチニン比300mg/g対10mg/gの1,000人・年当たり超過死亡は、それぞれ7.5(同:4.3~11.9)、12.2(同:7.9~17.6)、22.7(同:15.3~31.6)、34.3(同:19.5~52.4)であった。
CKD集団では、死亡に関する補正後相対リスクの、加齢に伴う減少はみられなかった。
全集団では、ESRDに関するeGFR低値、高アルブミン尿の、相対リスクと絶対リスクは、全年齢層でほとんど差はあまりなかった。