プレドニゾロン+クロラムブシル、特発性膜性腎症の腎機能低下を抑制/Lancet

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2013/03/13

 

 特発性膜性腎症で腎機能障害が進行している患者について、プレドニゾロンと免疫抑制剤クロラムブシル(chlorambucil)による併用療法(1ヵ月ずつ交替で6ヵ月間)が最も支持される治療アプローチであることが、英国・バーミンガム大学のAndrew Howman氏らによる無作為化試験の結果、報告された。本検討は免疫抑制剤の腎保護効果の検証を目的としたもので、同時に検討されたシクロスポリン単独12ヵ月の治療については腎保護効果がみられず、同治療については「回避すべきである」と報告した。膜性腎症の一部の患者について免疫抑制剤による治療効果が認められているが、これまで腎機能が低下している患者については試験に基づくエビデンスは得られていなかった。Lancet誌オンライン版2013年1月8日号掲載報告より。

支持療法、併用療法、免疫抑制剤単独療法で比較
 研究グループは、免疫抑制剤治療が腎機能の低下が認められる特発性膜性腎症患者において腎保護効果を有するかを評価する無作為化試験を行った。

 試験は英国内の腎クリニックまたは急性期病院の腎臓病部門37ヵ所から被験者を募り行われた。被験者は、18~75歳の、生検により特発性膜性腎症と診断され、血清クレアチニン値が300μmol/L未満、腎排泄機能20%以上低下が試験にエントリーする前の2年間で3ヵ月以上測定されたことが3回以上ある患者であった。

 被験者は無作為に1対1対1の割合で、(1)支持療法のみ受ける群、(2)支持療法+6ヵ月間にわたるプレドニゾロン(1、3、5ヵ月時:静注1g/日×連続3日間、経口0.5mg/kg/日×28日間)とクロラムブシル(2、4、6ヵ月時:経口0.15mg/kg/日、漸次減量)の併用療法、(3)支持療法+シクロスポリン12ヵ月(5mg/kg/日、漸次減量)に割り付けられた。主要アウトカムは、intention to treat解析による、ベースラインからの腎機能20%以上低下であった。

プレドニゾロン+クロラムブシル併用療法のさらなる進行リスクは0.44
 108例が無作為化され、33例が支持療法のみ群に、37例がプレドニゾロンとクロラムブシル群に、38例がシクロスポリン群に割り付けられた。そのうち2例(シクロスポリン群1例、支持療法群1例)は適格条件を満たしておらず、intention to treat解析には組み込まれなかった。また45例は試験終了前にプロトコルからは逸脱していた。大半の患者が投与量が調整され少量投与になっていた。

 フォローアップは、主要エンドポイント達成時または主要エンドポイントに達しない場合は3年間とされた。

 結果、腎機能20%以上低下のリスクは、支持療法群と比べてプレドニゾロンとクロラムブシル併用療法群で有意な低下が認められた[エンドポイント達成 19/33例(58%)対31/37(84%)、ハザード比(HR):0.44、95%信頼区間(CI):0.24~0.78、p=0.0042]。

 シクロスポリン群[29/36(86%)]と支持療法群とのリスクは有意な差はみられなかったが(HR:1.17、95%CI:0.70~1.95、p=0.54)、3群間のリスクの差は有意であった(p=0.003)。

 重大有害事象の発生は3群ともに頻度が高かった。プレドニゾロンとクロラムブシル併用療法群の同発生は支持療法群よりも高かった(56件対24件、p=0.048)。

(武藤まき:医療ライター)

専門家はこう見る

コメンテーター : 浦 信行( うら のぶゆき ) 氏

札幌西円山病院 名誉院長

J-CLEAR評議員