瘤の直径が3.0~5.4cmの小さな腹部大動脈瘤(AAA)の破裂の予防に要する超音波検査は数年に一度で十分である可能性が、英国・ケンブリッジ大学のSimon G Thompson氏らRESCAN Collaboratorsの検討で示された。AAAは破裂後の生存率が20%と低く、通常は破裂するまで無症状である。欧米では、瘤径<5.5cmのAAAは破裂のリスクが手術に伴うリスクよりも低く、多くは成長も遅いため超音波による監視検査が行われるが、破裂前の瘤の増大を検出する適切な検査間隔についてはコンセンサスが得られていないという。JAMA誌2013年2月27日号掲載の報告。
至適な超音波検査間隔をメタ解析で評価
研究グループは、AAAの破裂や瘤径の過剰な増大のリスクを抑制する至適な超音波検査間隔の評価を目的とするメタ解析を行った。
解析には、小型AAAの瘤径増大や破裂に関する試験に参加した個々の患者のデータを用いた。試験は、データベースを用いて2010年12月までに発表された文献を系統的に検索することで抽出した。
各試験の論文著者と連絡を取り、18試験のデータセットを得た。これらの試験に参加した合計1万5,471人(男性1万3,728人、女性1,743人)について解析を行った。
瘤径3.0cmなら8.5年に一度の検査で、破裂リスクが1%未満に
AAAの瘤径増加は試験によってばらつきがみられた。男性では、ベースライン時の瘤径3.0cmのAAAは年間平均1.28mm増大し、5.0cmのAAAは年間平均3.61mm増大した。瘤径が0.5cm増加するには、年間平均で0.59mmの増大を要した。女性では瘤径3.0cmのAAAは年間平均1.46mm増大し、5.0mmのAAAは3.62mm増大した。
破裂率にも試験によるばらつきがみられた。AAAの破裂率は全般に低く、男性は1万1,262人中178人、女性は1,314人中50人であった。また、男性におけるベースライン時の瘤径3.0cmのAAAの破裂率は、1,000人年当たり0.5、5.0cmのAAAは6.4であったのに対し、女性はそれぞれ2.2、29.7と4倍以上に達した。男性ではAAAが0.5cm増加する毎に破裂率は1.91倍に増大した。
男性の場合、瘤径が5.5cm以上になるリスクを10%未満に抑制するのに要する検査の間隔は、3.0cmのAAAで7.4年、5.0cmのAAAでは8ヵ月であった。破裂リスクを1%未満に抑えるのに要する検査間隔は、それぞれ8.5年、17ヵ月だった。
著者は、「現行のAAAのスクリーニングプログラムで一般的に採用されている検査間隔とは異なり、小さなAAA患者の大多数では、数年間隔での検査が臨床的に許容可能と考えられる」と結論づけている。