冠動脈石灰化スコア、2型糖尿病患者のリスク評価に有用/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2013/04/05

 

 冠動脈石灰化(CAC)スコア≧10の2型糖尿病患者は、<10の患者に比べ全死因死亡および心血管イベントの複合転帰の発生リスクが有意に高いことが、カナダ・マウントサイナイ病院(トロント市)のCaroline K Kramer氏らの検討で示された。一般人口を対象とした大規模な前向き試験により、CACスコアは心血管イベントの発生を予測し、リスクの再評価に有用なことが示されているが、これらの試験の多くは糖尿病患者を除外しているため、2型糖尿病患者におけるCACスコアの役割は不明であった。糖尿病患者の心血管リスクは広範にわたることから、CACスコアの転帰予測能の評価が求められていた。BMJ誌オンライン版2013年3月25日号掲載の報告。

2型糖尿病におけるCACスコアの予測能をメタ解析で評価
 研究グループは、2型糖尿病におけるCACスコアと全死因死亡、心血管イベントの関連の評価を目的に、観察試験の系統的レビューとメタ解析を行った。

 データベースおよび米国糖尿病学会(ADA)、欧州糖尿病学会(EASD)、米国心臓病学会(ACC)、米国心臓協会(AHA)の年次学術集会(2011年度、2012年度)の抄録を検索し、2型糖尿病患者のベースラインのCACスコアと全死因死亡、心血管イベント(致死的、非致死的)の評価を行った前向き試験を選出した。

 2名の研究者が別個にデータの抽出を行い、ランダム効果モデルを用いてCACスコアの予測能を評価した。

CACスコア≧10の患者でリスクが5倍以上に
 2004~2012年に発表された8つの試験〔6,521例、802イベント(12.3%)、平均観察期間5.18年〕が解析の対象となった。ベースラインの男性の割合は46~63.3%、喫煙者は9~19%、高血圧は63.2~100%で、CACスコアの評価は7試験が電子ビームCT(走査時間100ms)、1試験がヘリカルCT(時間分解能500ms)で行っていた。

 CACスコア≧10の2型糖尿病患者における複合転帰(全死因死亡、心血管イベントおよびその双方)の発生リスクは、CACスコア<10の患者の5倍以上に達した〔相対リスク:5.47、95%信頼区間(CI):2.59~11.53、I2=82.4%、p<0.001〕。

 この複合転帰に関するCACスコア≧10の感度は高く(94%、95%CI:89~96)、特異度は低かった(34%、同:24~44)。陽性尤度比は1.41(同:1.20~1.66)、陰性尤度比は0.18(同:0.10~0.30)だった。

 複合転帰の検査前確率は12.3%で、CACスコア≧10の2型糖尿病患者の検査後確率が約17%であったのに対し、<10の患者の検査後確率は約1.8%と、検査前確率に比べ約7分の1に低下した。

 著者は、「2型糖尿病患者では、CACスコア≧10の場合に高い感度と低い特異度で全死因死亡、心血管イベントの発生が予測される」と結論し、「臨床的には、2型糖尿病という高リスク集団の中で、CACスコア<10の患者を相対的に低リスクの集団として層別化するのに有用と考えられる」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)

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コメンテーター : 近森 大志郎( ちかもり たいしろう ) 氏

東京医科大学 第二内科 教授

J-CLEAR評議員