妊娠中の抗うつ薬服用(SSRIと非選択的モノアミン再取り込み阻害薬)は、出生児の自閉症リスク増大と関連していたことを、英国・ブリストル大学のDheeraj Rai氏らによる住民ベースのネスティッドケースコントロール研究の結果、報告した。知的障害との関連はみられなかったという。しかし著者は、今回示された関連性について、妊娠中の重度のうつ病が自閉症リスクを増大する原因なのか、あるいは反映しているのかについてはさらなる研究が必要だとまとめている。また、「自閉症が認められたのは、服用者の1%未満の子どもについてであったことから、妊娠中の抗うつ薬服用が有意にリスクの増大に関与した可能性は低いと思われる」と言及している。BMJ誌オンライン版2013年4月19日号掲載の報告より。
出生児59万例を対象にネスティッドケースコントロール研究
本研究は、父親のうつ病歴および母親の妊娠中の抗うつ薬使用と出生児の自閉症との関連を調べることを目的としたものであった。
研究グループは、2001~2007年のスウェーデン、ストックホルム住民の0~17歳児58万9,114例を対象に、自閉症例と年齢・性でマッチさせた対照群を特定しネスティッドケースコントロール研究を行った。症例群は4,429例(知的障害あり1,828例、なし2,601例)、対照群は4万3,277例であった(うち自閉症例1,679例、妊娠中の抗うつ薬使用データがある対照1万6,845例)。
主要評価項目は、知的障害ありなしでみた自閉症診断例とした。
父親のうつ病歴とその他の特性は小児の出生前のレジスターで前向きに記録された。1995年以降に生まれた子どもについては、母親の妊娠中の抗うつ薬使用の記録(出産前の初回面談時に記録)が利用可能であった。
妊娠中に抗うつ薬服用、自閉症リスクは3.34倍、ただし発生ケースの割合は0.6%未満
結果、子どもの自閉症リスク増大と、母親のうつ病歴との関連が認められた(補正後オッズ比:1.49、95%信頼区間:1.08~2.08)が、父親のうつ病歴とは関連がみられなかった(同:1.12、0.69~1.82)。
服用薬について得られたデータに基づく解析の結果、この関連は妊娠中に抗うつ薬を服用していたと報告した母親のみに認められ(同:3.34、1.50~7.47、p=0.003)、SSRIか非選択的モノアミン再取り込み阻害薬の種類は問わなかった。
またすべての関連は、知的障害はみられない自閉症のケースで高く、知的障害を伴う自閉症のリスクが増大するというエビデンスはなかった。
因果関係があると仮定しても、妊娠中の抗うつ薬服用における自閉症の発生ケースは0.6%であった。
(武藤まき:医療ライター)