経口抗凝固療法を受けている患者へのペースメーカーや植込み型除細動器(ICD)の手術時に、ヘパリンに変更する橋渡し療法(bridging therapy)と比較して、ワルファリン療法を継続する戦略は、臨床的に有意なデバイスポケット血腫(device-pocket hematoma)の発生を顕著に減少することが、カナダ・オタワ大学心臓研究所のDavid H. Birnie氏らによる多施設共同単盲検無作為化試験の結果、報告された。ペースメーカーやICDの手術を要する患者では、14~35%と多くの患者が長期の経口抗凝固療法を受けている。現行ガイドラインでは、これら患者について、血栓塞栓症イベントのため高リスク患者についてはヘパリンに変更する橋渡し療法が推奨されているが、デバイスポケット血腫のリスクがかなりあること(17~31%)が問題視されていた。NEJM誌オンライン版2013年5月9日号掲載の報告より。
ワルファリン継続vs.ヘパリン橋渡し療法を多施設共同単盲検無作為化試験にて検討
橋渡し療法に関する問題に対して、いくつかの医療施設でワルファリン療法を中断しない手技を行うようになり、安全である可能性が示唆されたが、症例報告レベルにとどまり臨床試験はほとんど行われていなかった。
研究グループは、多施設共同単盲検無作為化試験にて、ワルファリン療法継続戦略の安全性と有効性を明らかにすることを目的とし、カナダの17施設とブラジルの1施設で被験者を登録した。被験者は、血栓塞栓症イベントの年間発生リスクが5%超の患者で、無作為に1対1の割合でワルファリン継続群とヘパリン橋渡し療法群に割り付けられた。
主要評価項目は、臨床的に有意なデバイスポケット血腫とし、その定義は、長期入院または抗凝固療法の中断、あるいはさらなる手術(血腫除去など)を余儀なくされた場合とした。
ワルファリン継続群のデバイスポケット血腫発生の相対リスクは0.19
試験は、データ・安全性モニタリングボードによって、事前に規定された2013年2月27日時点の2回目の中間解析後に終了が勧告された。この時点で評価された被験者データ数は668例であった。
臨床的に有意なデバイスポケット血腫の発生は、ワルファリン継続群では343例のうち12例であった(3.5%)。一方、ヘパリン橋渡し療法群338例のうち54例で認められた(16.0%)。ワルファリン継続群の相対リスクは0.19(95%信頼区間[CI:0.10~0.36、p<0.001)であった。
重大な手術または血栓塞栓症の合併症はほとんど認められず、両群間の有意な差もみられなかった。
なお、ヘパリン橋渡し療法群では、心タンポナーデが1例および心筋梗塞が1例、ワルファリン継続群では、脳卒中と一過性脳虚血性発作がそれぞれ1例ずつみられた。
(武藤まき:医療ライター)