ペーシングの必要性がない患者への一次予防として移植する植込み型除細動器(ICD)について、デュアルチャンバー(二腔)デバイスとシングルチャンバー(単腔)デバイスとを比較した結果、二腔ICDのほうがデバイス関連合併症が高率であり、移植後1年死亡率および入院アウトカムは両デバイスで同程度であったことが示された。米国・デンバー保健医療センターのPamela N. Peterson氏らによる後ろ向きコホート研究からの報告で、「ペーシング非適応患者に対して二腔ICDを優先的に用いる理由は明らかにならなかった」とまとめている。一次予防としてのICDの有効性を検討した無作為化試験は主に単腔ICDが用いられてきた。しかし臨床の場では、ペーシングの必要性が明白でない場合でも、しばしば二腔ICDが移植されている。これまで、二腔ICDと単腔ICDのアウトカムは明らかになっていなかった。JAMA誌2013年5月15日号より。
単腔ICDvs.二腔ICDの転帰を比較
研究グループは、突然死の一次予防に用いられる単腔ICDと二腔ICDのアウトカムを比較することを目的に、2006~2009年のNational Cardiovascular Data Registry's(NCDR)ICDに登録され、メディケア診療報酬の請求データにリンク可能であった入院データについて後ろ向きコホート研究を行った。対象には、一次予防でICDを受けたが、ペーシング非適応であった患者3万2,034例が含まれた。
主要評価項目は、患者・医師・病院データに基づく傾向スコアマッチングから推定された移植後1年の死亡率、全原因再入院、心不全再入院、90日以内のデバイス関連合併症の補正リスクとした。
1年後死亡率、全原因再入院、心不全再入院は同程度
結果、3万2,034例の患者のうち1万2,246例(38%)が単腔ICDを、1万9,788例(62%)が二腔ICDの移植を受けていた。
傾向スコアをマッチさせたコホートにおいて、単腔ICDのほうが合併症割合は有意に低かった[3.51%対4.72%、p<0.001、リスク差:-1.20(95%信頼区間[CI]:-1.72~-0.69)]。
一方で、1年後死亡率(未調整死亡率:9.85%対9.77%、ハザード比[HR]:0.99、95%CI:0.91~1.07、p=0.79)、1年後の全原因再入院(未調整入院率:43.86%対44.83%、HR:1.00、95%CI:0.97~1.04、p=0.82)、心不全による再入院(未調整入院率:14.73%対15.38%、HR:1.05、95%CI:0.99~1.12、p=0.19)については、いずれもデバイス間の有意差はみられなかった。