クロピドグレル追加、TIA患者の脳卒中を予防/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2013/07/08

 

 一過性脳虚血発作(TIA)および軽症虚血性脳卒中の患者において、クロピドグレル(商品名:プラビックス)+アスピリン併用療法はアスピリン単独療法に比べ脳卒中再発の予防効果が有意に優れることが、中国・首都医科大学附属北京天壇病院のYongjun Wang氏らが実施したCHANCE試験で示された。懸念された出血リスクの増加は認めなかった。中国では毎年、約300万人が新規に脳卒中を発症し、その約30%が軽症脳卒中であり、TIAの発症は毎年200万人以上に上るという。脳卒中は、TIAや軽症脳卒中から数週間以内に発症することが多く、パイロット試験ではクロピドグレル+アスピリン併用はアスピリン単独よりも脳卒中再発の予防効果が高い可能性が示唆されていた。NEJM誌オンライン版2013年6月26日号掲載の報告。

再発予防効果を無作為化プラセボ対照比較試験で評価
 CHANCE試験は、TIA、軽症脳卒中患者の脳卒中予防におけるクロピドグレル+アスピリン併用療法とアスピリン単独療法の有用性を比較する二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験。高リスクTIAまたは軽症急性虚血性脳卒中を発症後24時間以内の40歳以上の患者を対象に実施した。

 併用群はクロピドグレル初回用量300mgを投与後、75mg/日を90日間、アスピリンは75mg/日を21日間投与した。単独群にはプラセボとアスピリン75mg/日を90日間投与した。両群とも、第1日目に非盲検下にアスピリン75~300mg(用量は担当医が決定)が投与された。

 主要評価項目は、intention-to-treat集団における90日以内の脳卒中(虚血性、出血性)の発症とした。

脳卒中発症を32%抑制
 2009年10月~2012年7月までに中国の114施設に5,170例が登録され、クロピドグレル+アスピリン併用療法群に2,584例、アスピリン単独療法群には2,586例が割り付けられた。

 全体の年齢中央値は62歳、女性が33.8%で、イベントはTIAが27.9%、軽症脳卒中が72.1%、発症から割り付けまでの時間中央値は13時間であり、高血圧が65.7%、糖尿病が21.1%にみられ、喫煙経験者は43.0%であった。

 90日以内の脳卒中発症率は併用群が8.2%(212/2,584例)と、単独群の11.7%(303/2,586例)に比べ有意に低下した(ハザード比[HR]:0.68、95%信頼区間[CI]:0.57~0.81、p<0.001)。致死的あるいは回復不能な脳卒中は、併用群の5.2%(135/2,584例)、単独群の6.8%(177/2,586例)にみられた(0.75、0.60~0.94、p=0.01)。

 副次的評価項目のうち、脳卒中・心筋梗塞・心血管死の複合アウトカム(8.4 vs 11.9%、HR:0.69、95%CI:0.58~0.82、p<0.001)および虚血性脳卒中(7.9 vs 11.4%、0.67、0.56~0.81、p<0.001)の発症率が、併用群で有意に少なかった。心血管死(0.2 vs 0.2%、1.16、0.35~3.79、p=0.81)や全死因死亡(0.4 vs 0.4%、0.97、0.40~2.33、p=0.94)は両群で同等だった。

 中等度~重度の出血の発症率は併用群が0.3%(7/2,584例)、単独群も0.3%(8/2,586例)であった(p=0.73)。出血性脳卒中は両群とも8例ずつに認められ、発症率はいずれも0.3%だった(p=0.98)。

 著者は、「発症後24時間以内の高リスクTIA、軽症虚血性脳卒中患者において、クロピドグレル+アスピリン併用療法はアスピリン単独療法に比べ90日脳卒中リスクを32%抑制し、懸念された出血リスクの増加は認めなかった」と結論している。

(菅野守:医学ライター)

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コメンテーター : 後藤 信哉( ごとう しんや ) 氏

東海大学医学部内科学系循環器内科学 教授

J-CLEAR理事