経口フルオロキノロン系抗菌薬の服用は、網膜剥離のリスクを増大しないことが、大規模コホート試験で示された。デンマーク・Statens Serum InstitutのBjorn Pasternak氏らが住民ベースの約516万人を対象にしたコホート試験の結果、明らかにした。近年、眼科疾患患者を対象とした研究において、経口フルオロキノロン服用と網膜剥離との強い関連が報告されていた。JAMA誌2013年11月27日号掲載の報告より。
経口フルオロキノロン、過去180日以内の服用について網膜剥離リスクを比較
研究グループは、デンマークで1997~2011年にかけて、約516万人の住民ベースコホート試験を行い、そのデータを用いて経口フルオロキノロン服用と網膜剥離の外科治療(強膜内陥術、硝子体切除術、気体網膜復位術)との関連を分析した。
同コホートのうち、経口フルオロキノロン服用が確認されたのは、74万8,792例だった。そのうち66万572例(88%)はシプロフロキサシン(商品名:シプロキサンほか)を服用していた。一方、非服用は552万446例で、対照群とした。
分析において、服用について、現在服用中(治療開始1~10日前に服用)、最近服用(同11~30日前)、服用後(同31~60日前)、過去に服用(同61~180日前)の4つのカテゴリーに分類した。
網膜剥離発症リスク、経口フルオロキノロンの服用時期にかかわらず増大せず
網膜剥離が確認されたのは566件で、うち465件(82%)は裂孔原性網膜剥離だった。そのうち、フルオロキノロン服用者(時期を問わず)は72件、非服用者は494件だった。
網膜剥離の粗発生率(10万人年当たり)は、経口フルオロキノロンの現在服用中群が25.3件、最近服用群が18.9件、服用後群が26.8件、過去に服用群が24.8件であった。一方、非服用群は19.0件だった。
経口フルオロキノロン服用者は、非服用者に比べ、網膜剥離の発症リスクの有意な増大は認められなかった。非服用者に対する同発症の補正後リスク比は、現在服用中群が1.29(95%信頼区間:0.53~3.13)、最近服用群が0.97(同:0.46~2.05)、服用後群が1.37(同:0.80~2.35)、過去に服用群が1.27(同:0.93~1.75)だった。
現在服用中群の絶対リスク差は、100万件治療エピソード当たりの網膜剥離症例数で補正後、推定で1.5(同:-2.4~11.1)だった。
著者は、「先のカナダの研究報告とは対照的に、一般デンマーク人をベースとした今回のコホート試験において、経口フルオロキノロン服用は、網膜剥離のリスク増大と関連していなかった」とまとめた。ただし本試験には検出力に限界があり、現在服用中との関連における相対的リスクが3倍以上のものをルールアウトできるだけであり、あらゆる絶対リスク差は限定的なものであったと述べている。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)