ゴーシェ病(GD)は常染色体劣性遺伝疾患でアシュケナジ系ユダヤ人で比較的頻度が高く、1995年以降、イスラエルおよび全世界のアシュケナジ系ユダヤ人を対象にキャリアスクリーニングが行われているが、現在論争の的になっている。キャリアによく見られる1型GDは、大抵は無症候性であり効果的な治療法も存在するからだ。
しかし、イスラエルのヘブライ大学ハダーサメディカルスクールのShachar Zuckerman氏らは「キャリアスクリーニングの目的は、重症で治療不能の遺伝病を未然に防ぐことにある。影響を受けた小児出生の前にリスクにさらされているカップルを確認すること、そしてそのようなカップルに子供に影響が及ぶことを教示しオプションを提示することも目的の1つである」と述べる。JAMA誌9月19日号より。ゴーシェ病のキャリアカップルのスクリーニングプロセスとその後を調査
Zuckerman氏らは、イスラエルの遺伝子センター(10/12ヵ所;83.3%)からGDスクリーニングの検診者数、キャリア数・カップル数とこれらのカップルで確認された突然変異の小児出生に関するデータ(1995年1月1日~2003年3月31日の間)の提供を受け、キャリアカップルに対して電話調査を行った(2003年1月21日~2004年8月31日の間)。
主要評価項目は、スクリーニングの実施範囲(場所数、検診者数、キャリアカップル数)、プロセス(予備検査の種類、検査後診察)、結果(出生前診断を利用したか、妊娠の結果)。
最大の成果はカップルに正しく医学情報と選択権を与えられていること
検診者約28,893人のキャリア出現率は5.7%。83組のカップルがキャリアで、82組に子供に1型GD発症のリスクがあった。このうち70組(85%)の子供は無症候性かやや影響を受ける危険があった。12組(15%)には中等度の影響を受ける危険があった。
スクリーニング後に面談した65組で妊娠が確認されたのは90例。そのうち出生前診断が68例(76%)で行われ、16例の胎児(24%)にGDが見つかっているが、中絶したのは、無症候性かやや影響を受けると予測された13例の胎児のうち2例(15%)、中等例で3例のうち2例(67%)だった。
また、遺伝学的カウンセリングだけでなく、GDの専門家による医学的なカウンセリングを受けたカップルのほうが中絶に至った数が有意に少なかったことを明らかとなった[3/3(100%)対1/13(8%)、P =0.007]
この結果を受けZuckerman氏は、「GDキャリアスクリーニングは、カップルに知識と選択権を提供できていたという点で意義がある。スクリーニングプログラムの本来の目的を明示した本研究結果は、低浸透度疾患のキャリアスクリーニングプログラムに一石を投じるだろう」とまとめた。
(武藤まき:医療ライター)