低用量オピオイド(経口モルヒネ30mg/日以下相当)は、COPD患者の入院や死亡を増大せず、重度呼吸器疾患における症状軽減への使用は安全である可能性が報告された。スウェーデン・ルンド大学のMagnus P Ekstrom氏らが行った同国住民ベースの前向き連続患者コホート研究の結果で、一方で、高用量オピオイドは死亡を増大する可能性も示された。重度呼吸器疾患の患者では慢性の息切れ(呼吸困難)がみられるが、オピオイドによる緩和が可能である。またCOPD患者では一般に不安解消のためにベンゾジアゼピン系薬が用いられているが、これらの単独または併用使用が、呼吸抑制や入院、早期死亡を招くのではないかという懸念があった。BMJ誌オンライン版2014年1月30日号の掲載報告。
スウェーデン最重症COPD患者2,249例への使用を評価
研究グループは、最重症のCOPD患者に対するベンゾジアゼピン系薬とオピオイド使用の安全性について評価することを目的に、2005~2009年にスウェーデンでCOPDの長期酸素療法を受けたSwedevox Register登録患者2,249例について分析した。
主要評価項目は、ベンゾジアゼピン系薬とオピオイドの入院率または死亡率への影響で、年齢、性別、動脈血ガス、BMI、呼吸機能状態、入院歴、併存疾患、併用薬で補正し評価した。
2,249例(うち女性59%)のうち、ベンゾジアゼピン系薬使用患者は535例(24%/74.2歳、FEV
1 30.0%)、オピオイド使用患者は509例(23%/74.3歳、33.2%)だった。また200例(9%)がベースライン時に両種の薬物を併用していた。
高用量は死亡を増大するが、低用量は死亡を増大しない
入院については、2,214例(試験開始時に入院しており退院せずに死亡した35例を除外)を対象に分析した。そのうち1,681例(76%)が入院となったが(追跡期間中央値76日後)、ベンゾジアゼピン系薬もオピオイドも入院率増大との関連はみられなかった。それぞれのハザード比(HR)は0.98(95%信頼区間[CI]:0.87~1.10)、0.98(同:0.86~1.10)だった。また、入院率増大との関連は、高用量投与でもみられなかった。一方、両薬剤の併用は入院率低下と関連していた(HR:0.67、p=0.003)。
観察期間中(2009年末まで)の死亡は、1,129例(50%)だった(追跡期間中央値1.1年)。
ベンゾジアゼピン系薬は、補正後死亡率増大と関連していた(HR:1.21、95%CI:1.05~1.39)。また、高用量であるほど死亡率が上昇する用量依存の傾向がみられた(1日定義用量0.1増大につきHR:1.01、p=0.082)。
一方、オピオイドは、死亡率増大と用量依存の直線的な関連を示し、低用量オピオイド(経口モルヒネ30mg/日以下相当)は死亡率増大と関連していなかった(HR:1.03、95%CI:0.84~1.26)。対照的に高用量は死亡率増大と関連していた(同:1.21、1.02~1.44)。また併用と死亡の関連についても、オピオイドの高用量使用は死亡率増大と関連していたが、低用量使用では死亡リスクは増大しなかった。
これらの関連は、以下の影響を考慮しても変わらなかった。他の薬物との併用(p=0.400)、高炭酸ガス血症(ベンゾジアゼピン系薬p=0.26、オピオイドp=0.22)、各薬剤にナイーブであったこと(それぞれp=0.22、p=0.25)、不安症/うつ病の併存(ベンゾジアゼピン系薬p=0.34)、既往外傷(オピオイドp=0.53)。
(武藤まき:医療ライター)