乳がんの病理学的完全奏効は、無再発生存率(EFS)や全生存率(OS)との関連はほとんどなく、代替エンドポイントとしては不適であることを、米国FDAのPatricia Cortazar氏らが、12試験を対象としたプール解析の結果、報告した。Lancet誌オンライン版2014年2月14日号掲載の報告より。
被験者総数約1万2,000例のデータを分析
研究グループは、PubMedやEmbaseなどを基に、術前補助化学療法を行った乳がん患者を対象にした12試験(被験者総数1万1,955例)についてプール解析を行い、病理学的完全奏効と生存率との関連や、同頻度が長期臨床アウトカムの代替エンドポイントとして適切かどうかについて分析を行った。
分析対象とした試験は、200例以上の乳がん患者を対象に術前補助化学療法後に手術を実施し、病理学的完全奏効やEFS、OSについてのデータがあり、追跡期間の中央値が3年以上のものだった。
病理学的完全奏効の定義としては、(1)ypT0 ypN0(原発巣と腋窩リンパ節の浸潤・非浸潤を含めすべてのがん消失)、(2)ypT0/is ypN0(原発巣と腋窩リンパ節の浸潤がん消失)、(3)ypT0/is(原発巣のみ浸潤がん消失)の3種を用い、EFSやOSとの関連を調べた。
病理学的完全奏効の頻度の増加と生存率には関連性なし
結果、ypT0 ypN0またはypT0/is ypN0は、EFSとOSの改善に関与しており、ハザード比はEFSがそれぞれ0.44と0.48、OSが0.36と0.36だった。
ypT0 ypN0と長期アウトカムの関連が最も強かったのは、トリプルネガティブ乳がん(EFSハザード比:0.24、OSハザード比:0.16)と、HER2陽性乳がん・ホルモン受容体陰性でトラスツズマブ(商品名:ハーセプチン)投与を受けた人(同0.15、0.08)だった。
試験レベルの分析においては、病理学的完全奏効の頻度の増加とEFS、OSの間には、関連性はほとんど認められなかった(それぞれR
2=0.03、R
2=0.24)。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)