膠芽腫の1次治療、ベバシズマブの上乗せ効果示せず/NEJM

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2014/03/03

 

 新たに診断された膠芽腫患者の治療において、標準治療にベバシズマブ(商品名:アバスチン)を追加しても、全生存期間(OS)の延長は得られないことが、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのMark R Gilbert氏らの検討で示された。現在、北米における膠芽腫の新規診断例に対する標準治療は、テモゾロミド(同:テモダール)+放射線療法の同時併用療法後にテモゾロミドによる維持療法を行うアプローチである。ベバシズマブは血管内皮細胞増殖因子A(VEGF-A)に対するヒト化モノクローナル抗体で、再発膠芽腫の治療薬として承認されているが、新規診断例の標準治療への上乗せ効果は明らかにされていなかった。NEJM誌2014年2月20日号掲載の報告。

ベバシズマブの上乗せ効果を無作為化試験で評価
 研究グループは、膠芽腫の1次治療におけるベバシズマブの上乗せ効果を検討する二重盲検プラセボ対照無作為化試験を実施した。対象は、年齢18歳以上、新規に診断され中央判定で確定診断がなされた膠芽腫(WHO分類Grade IVの星状細胞腫)で、全身状態が良好(Karnofskyスコア≧70)な患者とした。

 全患者に標準治療として放射線療法(60Gy)+テモゾロミド(連日投与)が施行された。放射線療法の4週目にベバシズマブ(10mg/kg、2週ごと)またはプラセボの投与を開始する群に無作為に割り付け、最大12サイクルの維持療法中も投与を継続した。病態が増悪した時点で、患者と担当医に割り付けられた治療を知らせ、ベバシズマブ治療の開始または継続を可能とした(クロスオーバー)。

 2つの複合主要エンドポイント(ベバシズマブ追加による死亡リスクの25%の低下、増悪または死亡リスクの30%の低下)について評価を行った。

PFSは有意に延長したが、リスクの30%低下には達せず
 2009年4月~2011年5月までに登録された978例のうち637例が無作為割り付けの対象となり、ベバシズマブ群に320例が、プラセボ群には317例が割り付けられた。患者背景は両群間でバランスがとれていた。

 OS中央値は、ベバシズマブ群が15.7ヵ月、プラセボ群は16.1ヵ月であり、両群間に有意な差は認めなかった(ベバシズマブ群の死亡のハザード比[HR]:1.13、95%信頼区間[CI]:0.93~1.37、p=0.21)。

 無増悪生存期間(PFS)中央値は、ベバシズマブ群が10.7ヵ月とプラセボ群の7.3ヵ月に比べ有意に21%延長した(ベバシズマブ群の増悪または死亡のHR:0.79、95%CI:0.66~0.94、p=0.007)が、エンドポイントである30%には達しなかった。

 ベバシズマブ群では、プラセボ群に比べ化学放射線療法中の高血圧、血栓塞栓イベント、消化管穿孔の発生率、好中球の減少率がわずかながら上昇した。また、臨床ベネフィットの評価では、ベバシズマブ群で症状の負荷の増大、QOL低下、神経認知機能低下の頻度が経時的に上昇した。

 これらの結果を踏まえ、著者は「膠芽腫の新規診断例に対する1次治療において、標準治療にベバシズマブを追加してもOSは改善せず、PFSは延長したものの事前に規定された目標値には達しなかった」とまとめている。

(菅野守:医学ライター)

専門家はこう見る

コメンテーター : 中川原 譲二( なかがわら じょうじ ) 氏

梅田脳・脊髄・神経クリニック 脳神経外科

J-CLEAR評議員