経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた患者における赤血球輸血の施行には、かなりのばらつきがあること、また輸血を受けた患者において入院中の有害心イベントリスクの増大と関連していることが明らかにされた。米国・デューク大学臨床研究所のMatthew W. Sherwood氏らが、米国内病院でPCIを受けた患者について調べた結果、判明した。著者は、「今回観察された所見は、PCI患者の輸血戦略に関する無作為化試験実施の根拠となりうるものである」と述べている。JAMA誌2014年2月26日号掲載の報告より。
輸血の頻度および輸血と心筋梗塞、脳卒中、死亡の関連について評価
研究グループは、PCI患者の輸血パターンの現状と有害心転帰との関連を明らかにするため、2009年7月~2013年3月にCathPCI Registryに登録された全受診患者を対象に、後ろ向きコホート研究を行った。
被験者は、出血性合併症に関するデータが紛失した患者または入院中に冠動脈バイパス移植術を受けた患者を除いた、PCI施行患者225万8,711例であった。
主要アウトカムは、全集団および全病院(1,431病院)における輸血率であった。また、患者の輸血に関する傾向の交絡因子で補正後、輸血と心筋梗塞、脳卒中、死亡の関連についても評価した。
輸血を受けた患者の心筋梗塞2.60倍、脳卒中7.72倍、院内死亡4.63倍
結果、全体の輸血率は2.14%(95%信頼区間[CI]:2.13~2.16%)であった。輸血率は2009年7月から2013年3月の間の4年間で輸血率は、2.11%(95%CI:2.03~2.19%)から2.04%(同:1.97~2.12%)に、わずかだが低下していた(p<0.001)。
輸血を受けた患者は、高齢で(平均70.5歳vs. 64.6歳)、女性が多く(56.3%vs. 32.5%)、高血圧(86.4%vs. 82.0%)、糖尿病(44.8%vs. 34.6%)、腎障害の進行(8.7%vs. 2.3%)、心筋梗塞既往(33.0%vs. 30.2%)、心不全既往(27.0%vs. 11.8%)を有する傾向がみられた。
全体で、96.3%の病院で輸血率が5%未満であった。残る3.7%の病院で5%以上の輸血率だった。病院間の輸血率のばらつきは補正後も変わらず、病院間に輸血閾値のばらつきがあることが示唆された。
輸血を受けたことと、心筋梗塞(4万2,803件、4.5%vs. 1.8%、オッズ比[OR]:2.60、95%CI:2.57~2.63)、脳卒中(5,011件、2.0%vs. 0.2%、OR:7.72、95%CI:7.47~7.98)、院内死亡(3万1,885件、12.5%vs. 1.2%、OR:4.63、95%CI:4.57~4.69)との関連が、出血性合併症に関わりなく認められた。