コストカット目的での看護スタッフ減員は、患者アウトカムに悪影響をもたらす一方で、学士号取得の看護師配置を手厚くすると院内死亡は減少するという研究報告が発表された。米国・ペンシルベニア大学看護学部のLinda H Aiken氏らが、ヨーロッパ9ヵ国で行った後ろ向き観察研究の結果、明らかにした。病院の支出リスクを最小とするための厳格な尺度とヘルスケアシステムの再構築は、患者アウトカムに悪影響を与えることが示唆されている。Aiken氏らは、患者対看護職員比率(看護体制)、および看護師の教育レベルを調べ、院内死亡率との関連について調べた。Lancet誌オンライン版2014年2月26日号掲載の報告より。
ヨーロッパ9ヵ国300病院のデータをもとに看護師配置と看護体制について分析
本検討は、病院運営上の最も大きなコスト要素の1つである看護師に関する、意思決定のための情報提供を目的としたRN4CAST研究の一貫として行われた。RN4CASTには12ヵ国が資金提供・参加するが、今回の検討では、同様の患者退院データを有する9ヵ国(ベルギー、英国、フィンランド、アイルランド、オランダ、ノルウェー、スペイン、スウェーデン、スイス)300病院における、2009~2010年のデータを入手して検討が行われた。
検討では、同一手術を受けた50歳以上の患者42万2,730例の退院データを入手し、診療データを標準プロトコル(ICD-9または10に準拠)でコード化し、年齢、性別、入院タイプ、43のダミー変数で分類した手術タイプ、17のダミー変数で分類した入院時の併存疾患などのリスク調整尺度を用いて、30日院内死亡率を評価した。
一方、2万6,516例の看護師にサーベイを行い、看護職員配置と教育レベルを調べた。
一般化推定方程式を用いて、入院30日間の術後患者の死亡に影響を与えた看護職員要因について、その他の病院特性および患者特性での補正前および補正後の評価を行った。
担当患者が1人減れば、または学士号取得看護師が10%増えるごとに院内死亡率は7%低下
結果、看護職員の作業負荷が患者1人分増大するにつき、入院患者の30日院内死亡率は7%上昇することが示された(オッズ比:1.068、95%信頼区間[CI]:1.031~1.106)。
一方で、学士号取得看護師が10%増えると院内死亡率は7%低下することが示された(同:0.929、0.886~0.973)。
これらの関連は、看護職員の60%が学士号取得者で看護体制6対1の病院は、同看護職員が30%で看護体制8対1の病院と比べて、院内死亡が約30%低いことを意味するものであった。