トリクロサン被覆縫合糸、術後感染症リスクを減少せず/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2014/04/24

 

 正中開腹術の縫合に、トリクロサンで被覆した縫合糸を使っても、被覆していない縫合糸を使った場合と比べて、術後30日以内の術部感染症の発症リスクは減少しないことが判明した。ドイツ・ハイデルベルク大学のMarkus K. Diener氏らが、約1,200例を対象に行った無作為化比較試験「PROUD」の結果、報告した。術後手術部位感染症は、最も頻繁な開腹手術後の合併症の1つである。トリクロサン被覆縫合糸は、その発生を抑制することを目的に開発されたものだった。Lancet誌オンライン版2014年4月4日号掲載の報告より。

術後30日以内の手術部位感染発生率を比較
 Diener氏らは、ドイツ国内24ヵ所の病院を通じ、2010年4月~2012年10月にかけて選択的腹部正中開腹術を行った18歳以上の患者、合わせて1,185例を対象に試験を行った。被験者を無作為に2群に分け、一方にはトリクロサンで被覆した縫合糸を、もう一方には被覆していない縫合糸を用い、腹部筋膜の閉鎖を行った。

 主要エンドポイントは、米国疾病予防管理センター(CDC)の適格基準に則った、術後30日以内の表層性または深層性の手術部位感染症の発生率だった。なお、患者と外科医、アウトカム評価者は、試験割り付けについてマスキングされていた。

感染症発生率、重度有害事象発生率ともに両群で同等
 結果、術後30日以内に手術部位感染を発生したのは、被覆縫合糸群の14.8%(587例中87例)に対し、非被覆縫合糸群16.1%(598例中96例)と、両群で有意差はなかった(オッズ比:0.91、95%信頼区間:0.66~1.25、p=0.64)。

 また、重度有害事象発生率についても、それぞれ25.0%、22.9%と両群で同等だった(p=0.39)。

 結果を受けて著者は「手術部位感染症を減らすために、革新的で、多様な戦略を、さらなる研究により開発し評価していく必要がある」とまとめている。

(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)