腫瘍形成ドライバー(がん化と増殖に関わる遺伝子変異)をターゲットとする治療薬(分子標的薬)の開発は、肺腺がん患者の治療を変貌させたといわれる。米国・スローンケタリング記念がんセンターのMark G. Kris氏らLung Cancer Mutation Consortiumは、試験担当医が適切に標的治療薬を選択でき、患者を臨床試験に登録できるよう、肺がんの腫瘍形成ドライバーの10遺伝子について検査する多重アッセイを用いて検討した。その結果、検討した肺腺がん患者の64%でターゲットとなるドライバーが検出され、医師が治療法を選択するうえで多重アッセイ法が有用であることが示されたという。JAMA誌2014年5月21日号掲載の報告より。
10遺伝子の発現頻度と、分子標的薬治療の割合と生存を評価
本検討は、肺腺がん患者の腫瘍形成ドライバーの検出頻度を明らかにし、特定ドライバーをターゲットとした治療の選択および生存評価に、そのデータを活用することが目的だった。
2009~2012年に米国14地点において、転移性肺腺がんで、全身状態(PS)が0~2の患者を登録し、10遺伝子について調べ、患者、および治療法と生存に関する情報を集めた。検討では、10遺伝子について調べた後、その結果を用いて適合したターゲット治療を選択した。
主要評価項目は、10遺伝子の発現頻度と、分子標的薬治療を受けた患者の割合、生存率とした。
遺伝子を検出し分子標的薬治療を受けていた患者の生存は有意に延長
試験期間中に、1,007例の患者が1遺伝子以上の検査を受け、733例が10遺伝子の検査を受けた。
結果、733例のうち466例(64%)の患者で、腫瘍形成ドライバーが見つかった。検査した腫瘍733例のうち見つかったドライバーの内訳は、
KRASが182例(25%)、感作
EGFRが122例(17%)、
ALK再配列が57例(8%)、その他の
EGFRが29例(4%)、2以上の遺伝子が見つかったのは24例(3%)、
ERBB2(
HER2)が19例(3%)、
BRAFが16例(2%)、
PIK3CAが6例(1%未満)、
MET増幅5例(1%未満)、
NRASが5例(1%未満)、
MEK1が1例(1%未満)、
AKT1はゼロだった。
生存期間中央値は、腫瘍形成ドライバーを有し分子標的薬治療を受けていた260例は3.5年(範囲[IQR]:1.96~7.70)、腫瘍形成ドライバーを有していたが分子標的薬治療は受けていなかった318例は2.4年(IQR:0.88~6.20)だった(傾向スコア補正後ハザード比:0.69、95%信頼区間[CI]:0.53~0.9、p=0.006)。
結果を踏まえて著者は、「ドライバーと適合した治療を受けていた患者の生存は延長したが、それが標的治療に基づくものかを調べる無作為化試験を行うことが必要である」とまとめている。