脳卒中に対する遺伝子組換え組織型プラスミノーゲン活性化因子(rtPA)療法の時間依存的有効性について、ドイツの大規模脳卒中レジストリデータの後ろ向き解析の結果と、無作為化試験プール解析で示されている結果を比較した結果、類似していることが示された。同国ハイデルベルク大学のChristoph Gumbinger氏らによる報告で、著者は、「臨床でも早期のrtPA療法が良好な転帰と関連しているようであった。入院中または救急搬送時におけるrtPA療法を、早期に開始することの重要性を強調するものである」とまとめている。無作為化試験のプール解析の結果では、rtPA療法開始時間について、リスクベネフィットの境界時間は発症から最長4.5時間であることが示されていた。しかし無作為化試験は一部の患者を対象としたものであり、臨床に一般化して適用できるのかについては確認されていなかった。BMJ誌オンライン版2014年5月30日号掲載の報告より。
ドイツ大規模臨床データ8万4,439例について後ろ向きに解析
研究グループは、臨床での急性虚血性脳卒中に対するrtPA療法の時間依存的有効性を大規模総合住民ベースのデータを用いて検討するため、ドイツ南西部にある大規模州の1つ、バーデン=ヴュルテンベルク州(人口1,040万人)のデータを対象とした。同州データには、148病院で治療された急性脳卒中患者データ8万4,439例が含まれており、rtPA療法を受けていたのは1万263例(12%)、非治療群は7万4,176例(88%)だった。
主要エンドポイントは、退院時の修正Rankin尺度スコアで定めた「アウトカム良好」(スコア0、1)、「アウトカム不良」(スコア2~6)とし、アウトカムとrtPA療法との関連をバイナリロジスティック回帰法にて分析した。最初のモデルでは治療群vs. 非治療群について評価し、次にrtPA療法群の患者について脳卒中発症から治療開始までの時間(0~90分、91~180分、181~270分、271分以上)で分類したモデルを用いて評価した。
さらに、脳卒中rtPA療法と院内死亡率との関連について類似性解析を行った。
また共同主要エンドポイントとして、退院時に修正Rankin尺度スコアが低値となる可能性について序数ロジスティック回帰分析にて評価(シフト解析)した。
臨床でもリスクベネフィットの境界は4.5時間
患者、病院、治療特性について補正後、rtPA療法について、時間依存的に転帰が良好となる関連が認められた。
「アウトカム良好」となるために必要な治療数(NNT)は、発症後1.5時間以内開始では4.5(「アウトカム良好」vs. 「アウトカム不良」のオッズ比[OR]:2.49)、1.5時間超~3時間以内に開始では6.4(同:1.86)、3時間超~4.5時間以内に開始では18.0(同:1.26)であった。死亡リスクは、4.5時間までは各治療開始時間別群の間で差はみられなかった。各群の補正後ORは、0.85、0.99、0.99だった。
一方、4.5時間超でrtPA療法を受けた患者(不適当な組み合わせの治療アプローチを含む)は、「アウトカム良好」のためのNTTは18.6(OR:1.25、95%信頼区間[CI]:1.01~1.55)であったが、死亡リスクが高く、補正後ORは1.45(95%CI:1.08~1.92)だった。