心不全入院患者に対する予防的植込み型除細動器(ICD)の移植は、左室駆出分画(LVEF)が30~35%および30%未満の患者についても、3年生存率を有意に改善することが、米国・デューク大学医療センターのSana M. Al-Khatib氏らによる後ろ向きコホート研究の結果、明らかにされた。著者は、「LVEF 35%以下でも適格基準を満たす患者には予防的ICD移植を推奨するガイドラインを支持する所見が得られた」とまとめている。同手技の臨床試験では、少数だがLVEF 30~35%の患者が含まれていた。また米国では同レベルの患者でICD移植を受ける人が多数に上ることが報告されており、生存との関連を調べる重要性から本検討が行われた。JAMA誌2014年6月4日号掲載の報告より。
LVEF 30~50%、30%未満患者でICD移植vs. 非移植の全死因死亡を評価
研究グループは、LVEF 30~35%でICD移植を受けた患者の特性を明らかにし、非移植患者との生存率を比較した。被験者は、2006年1月1日~2007年12月31日に全米心血管データ登録ICDレジストリ(NCDR)に登録された、メディケア受給者でLVEF 30~35%、心不全で入院の間にICD移植を受けた患者と、Get With The Guidelines-Heart Failure(GWTG-HF)データベースに登録されていたICDを受けなかった類似の患者を特定し分析に組み込んだ。同様にLVEF 30%未満の患者についても分析を行った。
被験者数は、LVEF 30~35%の患者が3,120例(適合コホート群816例)、同30%未満患者は4,578例(同2,176例)で、傾向スコアとCoxモデルを用いて分析した。
主要アウトカムは、全死因死亡で、2011年12月31日までのメディケア支払請求データを入手して評価した。
30~35%、30%未満の患者とも同程度にICD移植の恩恵を享受
LVEF 30~35%の適合コホート群816例(ICD移植群[NCDR]:408例、ICD非移植群[GWTG-HF]:408例)のベースライン時特性に有意な差はなかった。
分析の結果、ICD移植群は追跡期間中央値4.4年(範囲:2.7~4.9年)において248例が死亡、ICD非移植群は同2.9年(同:2.1~4.4年)において249例の死亡が報告された。3年死亡率は、ICD移植群51.4%vs. ICD非移植群55.0%で、ICD移植群の有意な低下が認められた(ハザード比[HR]:0.83、95%信頼区間[CI]:0.69~0.99、p=0.04)。
また、LVEF 30%未満の患者においても、ICD移植群(NCDR 1,088例)とICD非移植群(GWTG-HF 1,088例)の死亡数は634例vs. 660例で、3年死亡率は45.0%vs. 57.6%、HRは0.72(95%CI:0.65
~0.81、p<0.001)とICD移植群における死亡率の有意な低下が認められた。
ICD移植を受けた両LVEF(30~35%と30%未満)患者群に有意な差はみられず(p=0.20)、いずれのLVEF患者にもICD移植を受けたことによる同程度の良好な生存が確認された。