総胆管結石の中等度リスクを有する胆石症患者の治療では、術前の総胆管精査を行わずに、術中の胆道造影所見に基づいて必要な検査を実施するほうが、入院期間が短く検査数は少なくて済み、周術期合併症や術後QOLの増悪はみられないことが、スイス・ジュネーブ大学病院のPouya Iranmanesh氏らの検討で示された。総胆管結石疑い例には、MR胆道膵管造影(MRCP)、超音波内視鏡検査(EUS)、内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)、術中胆道造影などの検査が行われるが、総胆管結石の多くは自然に十二指腸へと排出されるため、術前の総胆管精査には疑問の声もあるという。JAMA誌2014年7月9日号掲載の報告。
術前精査の有無別の入院日数を無作為化試験で評価
研究グループは、総胆管結石の中等度リスクを有する胆石症患者では、術前の総胆管精査を行わずに胆嚢摘出術を施行し、術中に胆道造影を実施するという治療戦略が、術前に精査を行うアプローチに比べ有用性が高いとの仮説の検証を目的に無作為化試験を実施した。
対象は、ジュネーブ大学病院の救急外来を受診し、総胆管結石症の疑い(右上腹部もしくは心窩部の突然の痛み)で入院となり、肝機能検査値が上昇しているがビリルビン値は<4mg/dLで、胆管炎はみられず、腹部エコーで胆石を認めた患者とした。胆嚢炎の有無は問われなかったが、重症敗血症、膵炎、画像診断で総胆管結石が証明された患者は除外された。
参加者は、入院から48時間以内に緊急腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し、術中に胆道造影を行う群(即時手術群)または術前総胆管検査としてEUSを行い、必要に応じてERCPを実施した後、腹腔鏡下胆嚢摘出術と術中胆道造影を施行する群(対照群)に無作為に割り付けられた。
即時手術群の患者は、術中胆道造影で総胆管結石が発見された場合は術中または術後にERCPを行い、術中胆道造影が施行不能の場合は術後にMRCPを行い、必要に応じてERCPを実施することとした。主要評価項目は入院日数で、副次評価項目は総胆管検査数、合併症などであった。
入院日数:5 vs. 8日、検査数:25 vs. 71件、合併症:4 vs. 7例
2011年6月~2013年2月までに100例が登録され、即時手術群に50例(年齢中央値46歳、女性34例、急性胆嚢炎22例)、対照群にも50例(48歳、33例、24例)が割り付けられた。フォローアップ期間は6ヵ月であった。
入院日数中央値は、即時手術群が5日であり、対照群の8日に比べ有意に短縮した(p<0.001)。術中胆道造影以外の総胆管検査数は、それぞれ25件、71件であり、即時手術群で有意に少なかった(p<0.001)。
総胆管結石が確証された患者は、即時手術群が11例(22%、術中胆道造影10例、術後ERCP 1例)、対照群は10例(20%、術前EUS 8例、術中胆道造影2例)であった(p=0.81)。開腹手術への転換はそれぞれ1例、2例(p=0.56)、手術時間は99分、117分(p=0.18)、術中胆道造影の不成功は0例、3例(p=0.12)、再手術は0例、3例(p=0.24)、再入院は1例、2例(p=0.98)であった。
合併症(Clavien-Dindo分類)は、即時手術群が4例(8%)、対照群は7例(14%)に認められ(p=0.53)、そのうち重篤例はそれぞれ2例(4%)、4例(8%)だった(p=0.68)。術後QOL評価(EQ-5D-5Lスコア)のパラメータはすべて両群間で同程度であった。
著者は、「即時手術群の60%(30/50例)が、術中胆道造影後に総胆管検査をまったく必要としなかった。したがって、多くの患者が不要な術前検査を受けていることになる」と指摘している。
(菅野守:医学ライター)