肥満で10がん腫の発症増加/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2014/08/27

 

 過体重や肥満は、子宮体がんや胆嚢がんなど10のがん種の発症増加に寄与していることが、英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のKrishnan Bhaskaran氏らの検討で示された。前立腺がんと閉経前乳がんは肥満者では少ないこともわかった。BMIが高いと特定のがんに罹患しやすくなることが、いくつかのコホート試験やメタ解析で示されている。しかし、がんのリスクパターンの特性を、可能性のある交絡因子を補正したうえで、大規模かつ詳細に検討した試験はこれまでなかったという。Lancet誌オンライン版2014年8月14日号掲載の報告。

約524万人のプライマリ・ケア患者データを解析
 研究グループは、BMIと頻度の高い22のがん種の関連を評価する地域住民ベースの前向きコホート試験を実施した。解析には、英国のプライマリ・ケアの診療記録が登録されたClinical Practice Research Datalink(CPRD)のデータを使用した。線形および非線形モデルを用い、がんの発症に及ぼす性別、閉経状態、喫煙、年齢の影響を考慮した検討を行った。

 524万3,978人が解析の対象となった。このうちBMI<18.5が16万5,530人、18.5~25が257万1,573人、≧25が250万6,875人だった。全体の年齢中央値は37.9歳、女性が54.6%であり、喫煙者は35.5%、軽度飲酒者は57.2%、中等度飲酒者は10.2%、重度飲酒者は2.6%で、糖尿病既往歴ありは3.6%であった。

 16万6,955人が、対象となったがんを発症した。BMIは22種のがんのうち17種と有意な関連を示したが、影響の程度はがん種によってばらつきがみられた。

BMI 1上昇でがん患者が年間3,790人増加
 BMIが5増加するごとに発症率が有意に上昇したがん種は、子宮体がん(ハザード比[HR]:1.62、99%信頼区間[CI]:1.56~1.69、p<0.0001)、胆嚢がん(1.31、1.12~1.52、p<0.0001)、腎がん(1.25、1.17~1.33、p<0.0001)、子宮頸がん(1.10、1.03~1.17、p=0.00035)、甲状腺がん(1.09、1.00~1.19、p=0.0088)、白血病(1.09、1.05~1.13、p≦0.0001)であった。

 BMIは、全体として肝がん(HR:1.19、99%CI:1.12~1.27)、結腸がん(1.10、1.07~1.13)、卵巣がん(1.09、1.04~1.14)、閉経後乳がん(1.05、1.03~1.07)の発症と正の相関を示した(p<0.0001)が、これらの関連にはBMIや他の背景因子の程度でばらつきが認められた。

 BMIと前立腺がん、閉経前乳がんのリスクは全体(それぞれ、HR:0.98、99%CI:0.95~1.00、0.89、0.86~0.92)および生涯非喫煙者(それぞれ、0.96、0.93~0.99、0.89、0.85~0.94)の双方で逆相関を示した。これに対し、BMIと肺がん、口腔がんのリスクには生涯非喫煙者では関連はなかったものの(それぞれ、0.99、0.93~1.05、1.07、0.91~1.26)、いずれのがんも喫煙者と元喫煙者では逆相関の関係が認められ、交絡因子としての喫煙の影響が推察された。

 一方、BMIと正相関する10のがん種に占める過体重や肥満に起因するがんの割合は、子宮体がんが40.8%、胆嚢がんが20.3%、腎がんが16.6%、肝がんが15.6%、結腸がんが11.1%、子宮頸がんが7.5%、卵巣がんが7.3%、白血病が6.3%、閉経後乳がんが5.1%、甲状腺がんは1.9%であった。

 また、英国の一般人口では、BMIの1の上昇により、上記のBMIと正相関する10のがん種のうち1つを発症する患者が年間3,790人増加すると推定された。

 著者は、「一般人口レベルでBMIは実質的にがんのリスクと関連することがわかった」とし、「BMIが正常範囲内であっても、高めであればリスクが増大するがんもある。また、英国ではこの12年間にBMIがほぼ1上昇しており、この傾向に歯止めをかける戦略を検討すべき」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)