RSウイルス感染にGS-5806が有効/NEJM

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2014/09/03

 

 開発中の抗ウイルス薬GS-5806は、RSウイルス(RSV)感染健常人のウイルス量を減少させ、臨床症状の重症度を低下することが、米国・テネシー大学医学大学院のJohn P. DeVincenzo氏らの検討で示された。RSVは乳児の入院の主要な原因であり、重篤な疾患や死亡の原因としての認識が高まっているが、有効性が確認されている抗ウイルス治療はない。GS-5806は、ウイルスエンベロープの宿主細胞膜との融合を阻害することで、低ナノモル濃度でRSVの細胞内侵入を阻止する低分子量の経口薬である。NEJM誌2014年8月21日号掲載の報告。

さまざまな用量をプラセボ対照無作為化試験で評価
 研究グループは、RSVの臨床株を鼻腔内に接種された健常成人において、GS-5806の有用性を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化試験を行った。

 被験者には12日間のモニタリングが行われた。RSV感染検査で陽性または接種5日後のいずれか早いほうの時点で、GS-5806またはプラセボを投与する群に無作為に割り付けた。治療薬群は、用量の違いで7つのコホートに分けた。

 コホート1~4はGS-5806 50mgを初回投与後25mg/日を4日間投与、コホート5は50mgを初回投与後25mg/日を2日間投与、コホート6は100mgを1回のみ投与、コホート7は10mgを初回投与後5mg/日を4日間投与した。コホート5、6、7の用量選定は、コホート1~4のデータの中間解析後に行った。

 主要評価項目は、ウイルス接種後12日間を通じ、薬剤の初回投与以降に採取した鼻洗浄サンプル中の定量的RT-PCRアッセイで測定したウイルス量の曲線下面積(AUC)とした。副次評価項目は、初回投与から5日間の鼻汁の総重量、患者が日誌に記した症状スコアの変化のAUCなどであった。

ウイルス量の減少と症状の軽減の関連を証明
 コホート1~4には78例が登録され、治療薬群に39例(平均年齢28.6歳、男性74.4%)、プラセボ群にも39例(25.0歳、76.9%)が割り付けられた。

 コホート1~4のRSV感染が成立した54例では、治療薬群はプラセボ群に比べウイルス量が少なく(補正後の平均値:250.7 vs. 757.7 log10プラーク形成単位等量[PFUe]×時間/mL、p<0.001)、鼻汁の総重量が低く(平均6.9 vs. 15.1g、p=0.03)、症状スコアのベースライン時からの変化のAUCが小さかった(補正後の平均値:-20.2×時間 vs. 204.9×時間、p=0.005)。コホート5、6、7でも結果はほぼ同様であった。GS-5806投与群で、好中球数の低下(15.4 vs. 0%)、アラニンアミノトランスフェラーゼ値上昇(15.4 vs. 7.7%)などの有害事象の頻度がプラセボ群に比べ高かった。

 また有害事象は、GS-5806投与群で好中球数の低下(コホート1~4 vs. プラセボ:15.4% vs. 0%)、アラニンアミノトランスフェラーゼ値上昇(同:15.4% vs. 7.7%)などの頻度が高かった。

 著者は、「健常成人を対象としたウイルス接種試験において、GS-5806治療はRSV量を低下させ、RSV感染による臨床症状の重症度を改善した」とまとめ、「この結果は、治療によるRSV量の減少が症状の重症度の軽減と関連することを示すものである」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)