新規アンドロゲン標的薬が無効なCRPCの予測因子/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2014/09/17

 

 去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)患者の血中循環腫瘍細胞(CTC)におけるアンドロゲン受容体スプライスバリアント7のmRNA(AR-V7)は、CRPC治療薬エンザルタミドやアビラテロンに対する抵抗性獲得の原因である可能性が、米国ジョンズ・ホプキンス大学のEmmanuel S. Antonarakis氏らの検討で示された。両薬剤は、転移性CRPC(mCRPC)の治療にブレークスルーをもたらしたが、患者の約20~40%が反応せず、奏効例も最終的に抵抗性となる。抵抗性の原因として、アンドロゲン受容体のスプライスバリアントの可能性が指摘されており、AR-V7によってコードされるタンパク質は、両薬剤が標的とする受容体のリガンド結合領域を欠くが、リガンド非依存性の転写因子として構成的活性化の状態にあることが知られている。NEJM誌2014年9月11日号(オンライン版2014年9月3日号)掲載の報告。

AR-V7の有無とPSA奏効率などの関連を評価
 研究グループは、進行前立腺がん患者CTCのAR-V7と、エンザルタミドおよびアビラテロンに対する抵抗性獲得との関連を検証する試験を実施した。

 エンザルタミドまたはアビラテロンのいずれかの治療を受けているmCRPC患者を前向きに登録し、定量的逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)法を用いてCTCのAR-V7の評価を行った。

 AR-V7の状態(陽性、陰性)と前立腺特異抗原(PSA)奏効率(主要評価項目)、PSA無増悪生存期間(PSA-PFS)、臨床的または画像上のPFS、全生存期間(OS)との関連を解析した。PSA奏効は、4週以上持続するPSAのベースラインの50%以上の低下と定義した。

治療抵抗性の予測因子となる可能性
 2012年12月~2013年9月までに62例(エンザルタミド群:31例、アビラテロン群:31例)が登録された。ベースライン時のCTCサンプルでAR-V7が検出されたのは、エンザルタミド群が39%(12例)、アビラテロン群は19%(6例)であった。AR-V7が検出された18例では、全長アンドロゲン受容体mRNAの発現が有意に増加していた(p<0.001)。

 エンザルタミド群では、AR-V7陽性例は陰性例に比べ、PSA奏効率が有意に低かった(0 vs. 53%、p=0.004)。また、PSA-PFS中央値(1.4 vs. 6.0ヵ月、p<0.001)、臨床的または画像上のPFS中央値(2.1 vs. 6.1ヵ月、p<0.001)、OS中央値(5.5ヵ月 vs. 未到達、p=0.002)が、いずれも有意に短かった。

 アビラテロン群も同様に、AR-V7陽性例は陰性例に比し、PSA奏効率が有意に低く(0 vs. 68%、p=0.004)、PSA-PFS中央値(1.3 ヵ月 vs. 未到達、p<0.001)、臨床的または画像上のPFS中央値(2.3ヵ月 vs. 未到達、p<0.001)、OS中央値(10.6 ヵ月 vs. 未到達、p=0.006)が有意に短縮していた。

 全長アンドロゲン受容体mRNAの発現レベルで補正後も、AR-V7の検出と治療抵抗性との関連は維持されており、AR-V7はこれら2つの薬剤に対するCRPCの治療抵抗性を予測するバイオマーカーとなる可能性があることが示唆された。

 著者は、「これらの薬剤が無効な患者を事前に見つけ出し、他の有効な治療の選択が可能になる」とし、「これらの知見は、大規模な前向き試験でその妥当性を検証する必要がある」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)