ステージ0~IIIの片側性乳がんに対する両側乳房切除術後の全死亡率は、放射線治療併用の乳房温存術実施後と同程度であることが明らかにされた。また片側乳房切除術の総死亡リスクは、前述のいずれの施行後よりも高く、放射線治療併用の乳房温存術と比べると約1.35倍増大することが示された。米国・スタンフォード大学のAllisonW. Kurian氏らが、片側性乳がんの診断を受けた約19万例について行った観察コホート試験の結果、報告した。最近の傾向では、片側性乳がんにおいて両側乳房切除の実施が増えている。しかし医学的および心理社会的な合併症を伴う可能性があることから、著者は今回の結果を踏まえて、「その実施とアウトカムについてよりよく理解することが、がん治療の至適化の基本となる」と指摘している。JAMA誌2014年9月3日号掲載の報告より。
中央値89.1ヵ月追跡
研究グループは、米国カリフォルニア州で1998~2011年に、ステージ0~IIIの片側性乳がんの診断を受けた女性、18万9,734例について観察コホート試験を行った。
両側乳房切除術、乳房温存術と放射線治療、片側乳房切除術の別による、全死亡率、乳がん特異的死亡率を比較した。
追跡期間の中央値は89.1ヵ月だった。
両側乳房切除術の実施率、1998年以降年率14%で増加
結果、両側乳房切除術の実施率は、1998年の2.0%から、2011年の12.3%へと増加し、年間増加率は14.3%(95%信頼区間[CI]:13.1~15.5)だった。
また、年齢が40歳未満の患者への同実施率は、1998年の3.6%から2011年の33%へと、大幅な増大が認められた。
一方で、両側乳房切除術群の全死亡率は、放射線治療併用の乳房温存術群と有意な差はみられなかった(ハザード比[HR]:1.02、95%CI:0.94~1.11)。しかし、片側乳房切除術群の全死亡率は、放射線治療併用の乳房温存術群に比べ有意に高率だった(HR:1.35、同:1.32~1.39)。
10年全死亡率は、両側乳房切除術が18.8%(95%CI:18.6~19.0)、乳房温存術と放射線治療が16.8%(同:16.6~17.1)、片側乳房切除術が20.1%(同:19.9~20.4)だった。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)