化学療法奏効の進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)患者に対し、胸部放射線療法を行うと、1年生存率は変わらないものの、2年生存率は有意に増大することが判明した。また6ヵ月の無増悪生存を達成した割合も、胸部放射線療法を行った群で高率だった。オランダ・VU大学医療センターのBen J. Slotman氏らが、498例の患者について行った第III相無作為化比較試験の結果、明らかにした。結果を踏まえて著者は、「化学療法が奏効したすべてのES-SCLC患者について、予防的全脳照射に加えて胸部放射線療法を考慮すべきである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2014年9月14日号掲載の報告より。
オランダなど4ヵ国、42ヵ所の医療機関を通じ498例を無作為化
試験は2009年2月18日~2012年12月21日にかけて、オランダ16ヵ所、英国22ヵ所、ノルウェー3ヵ所、ベルギー1ヵ所の4ヵ国42ヵ所の医療機関を通じ、WHO全身状態スコアで0~2のES-SCLC患者498例を対象に行われた。
被験者を無作為に2群に分け、一方には胸部放射線療法(分割照射30Gy/10回)を実施し、もう一方には実施しなかった(対照群)。なお被験者全員に対して、予防的全脳照射を行った。
主要エンドポイントは、1年生存率だった。副次エンドポイントは、無増悪生存などだった。追跡期間の中央値は、24ヵ月だった。
2年生存率、胸部放射線療法群は13%に対し対照群は3%
intention-to-treat解析に含まれたのは、インフォームド・コンセントの段階で除外した3例を除外した、胸部放射線療法群247例、対照群248例であった。
その結果、1年生存率は、胸部放射線療法群が33%(95%信頼区間[CI]:27~39%)、対照群が28%(同:22~34%)と、両群で有意差はなかった(ハザード比[HR]:0.84、同:0.69~1.01、p=0.066)。
しかし、2年生存率は、それぞれ13%(同:9~19%)と3%(同:2~8%)と、胸部放射線療法群で有意に高率だった(p=0.004)。また進行リスクも、対照群より胸部放射線療法群で有意に低下した(HR:0.73、95%CI:0.61~0.87、p=0.001)。6ヵ月の無増悪生存の達成割合も、胸部放射線療法群が24%(同:19~30%)に対し、対照群は7%(同:4~11%)だった(p=0.001)。
安全性では、重度の毒性は認められず、グレード3以上の有害事象で共通してみられたのは、疲労感(11vs. 9例)、呼吸困難(3 vs. 4例)だった。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)