肺がん患者の肺葉切除術について、胸腔鏡下手術vs. 開胸手術の長期生存を検討した結果、全生存、がん特異的生存および無増悪生存のいずれも同等であったことが報告された。米国・ウェイル・コーネル・メディカル大学のSubroto Paul氏らが、肺葉切除術を受けた6,008例について傾向スコア適合分析を行い明らかにした。胸腔鏡下肺葉切除術は開胸肺葉切除術よりも、術後合併症が少ないことは知られている。しかし長期アウトカムへの影響については不明であった。今回の結果を踏まえて著者は、「胸腔鏡下手術は、肺葉切除後のアウトカムを損なうことがないようだ」とまとめている。BMJ誌オンライン版2014年10月2日号掲載の報告。
傾向スコア適合分析で両群を比較
検討は、米国メディケアのデータベースであるSurveillance, Epidemiology and End Results(SEER)を用いた傾向スコア適合分析法にて行われた。同データベースから、2007~2009年にプライマリな非小細胞肺がんの初回診断を受け、その後1~6ヵ月の間に肺葉切除術を受けた65歳以上患者を適格とし解析に組み込んだ。
主要評価項目は、全生存、無増悪生存、がん特異的生存について、非侵襲的である胸腔鏡下手術の影響であった。
3年の全生存、無増悪生存、がん特異的生存いずれも同等
対象期間中に2007~2009年に6,008例が肺葉切除を受けていた(うち開胸手術群は4,715例[78%])。全コホートの年齢中央値は74歳(範囲:70~78歳)、追跡期間中央値は40ヵ月であった。
傾向スコアで適合したコホート(胸腔鏡下手術群1,195例vs. 開胸手術群1,195例、追跡期間中央値36ヵ月)で分析を行った結果、3年の全生存(70.6%vs. 68.1%、p=0.55)、無増悪生存(86.2%vs. 85.4%、p=0.46)、がん特異的生存(92%vs. 89.5%、p=0.05)ともに、統計的な差は認められなかった。
なお、適合前の全コホートの分析(胸腔鏡下手術群1,293例vs. 開胸手術群4,715例)では、全生存(3年間について71.2%vs. 63.8%、p<0.001)、無増悪生存(同86.5%vs. 77.6%、p<0.001)、がん特異的生存(同92.1%vs. 84.7%、p<0.001)のいずれの割合も、胸腔鏡下手術群が有意に高率だった。
(武藤まき:医療ライター)