肝硬変なし未治療のC型肝炎ウイルス(HCV)遺伝子型1型単独感染患者およびHIV/HCV重複感染患者に対し、グラゾプレビル(grazoprevir、MK-5172)+エルバスビル(elbasvir、MK-8742)併用療法はリバビリン併用の有無を問わず、8週投与よりも12週投与が有効であることが判明した。米国・ジョンズホプキンス大学のMark Sulkowski氏らが第II相無作為化試験C-WORTHYの結果から報告した。グラゾプレビル+エルバスビル併用療法に関する検討はすでに、より大規模な第III相試験が行われている。著者は、「われわれの検討結果は、第III相試験の継続を支持するものであった」とまとめている。Lancet誌オンライン版2014年11月11日号掲載の報告より。
肝硬変なし未治療のHCV単独感染またはHIV/HCV重複感染患者について評価
C-WORTHYは、HCV患者に対するグラゾプレビル(1日100mg)+エルバスビル(1日20または50mg)併用療法について、リバビリン投与あり/なしで検討した第II相の国際多施設非盲検無作為化並行群間比較試験である。
研究グループは、肝硬変なし未治療のHCV遺伝子型1型単独感染またはHIV/HCV重複感染についての検討所見を報告した。被験者の適格条件は、18歳以上、末梢血HCV RNA値1万IU/mL以上の未治療HCV遺伝子型1型感染症患者であった。
検討では、パートAにおいて、HCV単独感染患者に対する併用療法+リバビリンあり/なしの12週投与を行った。被験者は遺伝子型1a、1b群で層別化され、次の各群に無作為化された。A1群(1a+1b):グラゾプレビル+エルバスビル(20mg)+リバビリン、A2群(1a+1b):グラゾプレビル+エルバスビル(50mg)+リバビリン、A3群(1b):グラゾプレビル+エルバスビル(50mg)。
パートBでは、HCV単独感染患者に対する8週投与と12週投与の検討、およびHIV/HCV重複感染患者に対する併用療法+リバビリンあり/なし12週投与の検討を行った。被験者は遺伝子型1a、1b群で層別化され、次の各群に無作為化された。B1群(1a):グラゾプレビル+エルバスビル(50mg)+リバビリンを8週投与、B2群(1a+1b):グラゾプレビル+エルバスビル(50mg)+リバビリンを12週投与、B3群(1a):グラゾプレビル+エルバスビル(50mg)、重複感染患者についてはB12群(1a+1b):グラゾプレビル+エルバスビル(50mg)+リバビリン、B13群(1a+1b):グラゾプレビル+エルバスビル(50mg)でいずれも12週投与。
主要エンドポイントは、ウイルス学的著効(SVR)について、各治療終了後12週時点でのHCV RNA値25 IU/mL未満達成患者の割合で評価した(SVR12)。
12週投与群のSVR12、HCV単独感染群93~98%、HIV/HCV重複感染群87~97%
試験に登録されたのは、HCV単独感染患者159例、HIV/HCV重複感染患者59例の計218例であった。
結果、12週投与リバビリンあり/なしのSVR12達成率は、HCV単独感染群が93~98%、HIV/HCV重複感染群は87~97%であった。このうちリバビリン投与なし群についてみると、HCV単独感染群は98%(95%信頼区間[CI]:88~100%、43/44例)、HIV/HCV重複感染群87%(同:69~96%、26/30例)であった。リバビリン投与群については、HCV単独感染群は93%(同:85~97%、79/85例)、HIV/HCV重複感染群97%(同:82~100%、28/29例)であった。
一方、HCV(遺伝子型1a)単独感染患者に対する8週投与のSVR12は、80%(95%CI:61~92%、24/30例)であった。
ウイルス学的失敗以外の理由で早期に治療中止となった被験者は6例いたが、そのうち5例は、試験最終測定時でHCV RNA値25 IU/mL未満を示していた。
12週治療群のウイルス学的失敗例は7例(7/188例、4%)で、薬剤関連耐性変異によるものであった。
安全性プロファイル(グラゾプレビル+エルバスビル併用療法+リバビリン投与あり/なし)は、HCV単独感染群、HIV/HCV重複感染群で類似していた。有害事象や検査値異常による治療中断例はなかった。最も頻度が高かった有害事象は、疲労(51例、23%)、頭痛(44例、20%)、悪心(32例、15%)、下痢(21例、10%)であった。
(武藤まき:医療ライター)