心房細動でワルファリン服用を開始した高齢患者について、腎機能が低下しているほど、大出血リスクが増大することが明らかにされた。とくに服用開始30日以内でその傾向は顕著で、また消化管出血により増大することも示された。カナダ・カルガリー大学のMin Jun氏らが、アルバータ州の患者登録データを基に、約1万2,000例の患者について行った後ろ向きコホート試験により明らかにした。BMJ誌オンライン版2015年2月3日号掲載の報告より。
eGFRにより被験者を6分類
研究グループは2003年5月1日~2010年3月31日の間に、心房細動でワルファリンの服用を開始した66歳以上の患者で、ベースライン時に腎機能測定を行った1万2,403例について調査を行った。
被験者について、推定糸球体濾過量(eGFR)に基づき、90以上、60~89、45~59、30~44、15~29、15(mL/分/1.73m
2)未満、の6群に分類し評価した。なお、末期腎不全患者については除外した。
主要評価項目は、頭蓋内や上部・下部消化管などの大出血による入院や救急外来の受診だった。
服用30日の大出血率、eGFR値15mL/分/1.73m2未満群で63.4/100人年
被験者の平均年齢は77歳、49.3%が女性で、45%がeGFR値60mL/分/1.73m
2未満だった。中央値2.1年の追跡期間中、大出血を呈したのは1,443例(11.6%)だった。
ワルファリン服用30日間の補正後出血率は、eGFR値が90mL/分/1.73m
2超の人で6.1/100人年(95%信頼区間:1.9~19.4)だったのに対し、15mL/分/1.73m
2未満の人で63.4/100人年(同:24.9~161.6)と高率だった。ワルファリン服用30日超の出血率についても同様な傾向が認められたが、その差は小さかった。この傾向は、主に消化管出血によるもので、eGFR値が15mL/分/1.73m
2未満の人の同発症リスクは、90mL/分/1.73m
2超の人の3.5倍に上った。頭蓋内出血については、腎機能低下によるリスクの増大は認められなかった。
また、eGFR値にかかわらず、ワルファリン服用開始30日以内の重大出血の発生率は、それ以降の追跡期間に比べ高率だった。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)