抗凝固薬による脳内出血、血腫増大の分岐点/JAMA

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2015/03/10

 

 抗凝固療法の合併症で脳内出血を発症した人は、4時間以内の国際標準比(INR)が1.3未満で、収縮期血圧が160mmHg未満だと、血腫増大リスク、院内死亡リスクともに減少することが明らかにされた。オッズ比はそれぞれ0.28、0.60であった。ドイツ・エアランゲン-ニュルンベルク大学のJoji B. Kuramatsu氏らが、約1,200例の患者について行った後ろ向きコホート試験の結果、明らかにした。同発症患者について、経口抗凝固薬の再開についても分析した結果、再開は虚血イベントの低下につながることが示されたという。なお、これらの結果について著者は、前向き試験での再現性と評価の必要性を指摘している。JAMA誌2015年2月24日号掲載の報告より。

血腫増大リスクや経口抗凝固薬の再開について分析
 研究グループは2006~2012年にかけて、ドイツ19ヵ所の三次医療機関を通じ、抗凝固療法の合併症で脳内出血を発症した患者1,176例について追跡した。そのうち853例については血腫増大、719例については経口抗凝固薬の再開について、それぞれ分析を行った。

 主要評価項目は、INR値や血圧値と血腫増大発症率との関連などだった。

INR値1.3未満の血腫増大発症率は19.8%、1.3以上では41.5%
 その結果、血腫増大が発症したのは、853例中307例(36.0%)だった。血腫増大率低下と関連がみられたのは、入院4時間以内のINR値が1.3未満と、同じく4時間以内の収縮期血圧160mmHg未満だった。具体的には、INR値1.3未満の血腫増大率は19.8%に対し、INR値1.3以上の同発症率は41.5%(p<0.001)。収縮期血圧160mmHg未満の同発症率は33.1%に対し、収縮期血圧160mmHg以上では52.4%だった(p<0.001)。

 入院4時間以内のINR値が1.3未満で収縮期血圧160mmHg未満だった場合、血腫増大に関するオッズ比は0.28(95%信頼区間[CI]:0.19~0.42、p<0.001)、院内死亡率のオッズ比は0.60(同:0.37~0.95、p=0.03)だった。

 また、経口抗凝固薬を再開したのは、719例中172例(23.9%)だった。虚血性合併症についてみると、再開しなかった人の発症率は15.0%(547例中82例)に対し、再開した人の発症率は5.2%(172例中9例)と、有意に低率だった(p<0.001)。出血性合併症については、それぞれ6.6%(547例中36例)、8.1%(172例中14例)で、有意差はみられなかった(p=0.48)。

 経口抗凝固薬を再開した心房細動患者について、傾向適合生存分析を行った結果、長期死亡のハザード比が0.258(95%CI:0.125~0.534)と有意に減少したことが認められた(p<0.001)。機能に関する長期アウトカムは、72.6%(1,083例中786例)の患者で不良だった。

(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

専門家はこう見る

コメンテーター : 浦 信行( うら のぶゆき ) 氏

札幌西円山病院 名誉院長

J-CLEAR評議員