がん検診における「過剰検出」(症状がみられず早期死亡を引き起こすことのないがん病変をスクリーニングで検出と定義)について、一般の人々の受け止め方は事前に与えられる情報(死亡率やベネフィット)で大きく異なることが、英国・オックスフォード大学のAnn Van den Bruel氏らによるサーベイの結果、明らかにされた。乳がん、前立腺がん、腸がんスクリーニングの設定で調べたところ、腸がんスクリーニングでの過剰検出に対する許容度が有意に低かったという。著者は、「スクリーニング案内時に過剰検出の可能性やその影響に関する明確な情報を伝え、人々が情報に基づいた選択(インフォームド・チョイス)ができるようにしなければならない」と指摘している。BMJ誌オンライン版2015年3月4日号掲載の報告より。
乳がん、前立腺がん、腸がんスクリーニング設定でサーベイ
サーベイでは乳がん、前立腺がん、腸がんのスクリーニングにおける過剰検出について、人々の許容度を明らかにし、またその許容度がスクリーニングから得られるベネフィットや過剰検出されたがん特異的有害性の大きさで変化するのかどうかを調べた。
調査は2014年8月に英国で、オンラインリサーチへの協力に積極的な18歳以上のボランティア被験者を電子メールやWeb上で公募して行われた。2011年の同国国勢調査に基づき代表的な年齢、性別を選択して1,000例が集められた。
研究グループは、女性被験者については乳がんと腸がん設定のシナリオを、男性被験者には前立腺がんと腸がん設定のシナリオを用意し、各がんの疫学、治療、治療結果に関する情報を解説した。次にベネフィットに関して、「がん特異的死亡率が10%減少する」「50%減少する」という2つの異なるシナリオを示した。
主要評価項目は、各がん死亡率およびベネフィットのシナリオ別について、0~1,000例(スクリーニング完了集団)で人々が許容できるとした過剰検出症例数であった。
腸がんスクリーニングでの過剰検出に対する許容度が有意に低い
結果、過剰検出への許容度はシナリオ設定により大きなばらつきがあることが示された。許容できるとした症例数は、中央値でみた場合、最も少なかったのは「腸がんスクリーニング・死亡率10%減少」設定シナリオで113例、最も多かったのは「乳がんスクリーニング・死亡率50%減少」で313例であった。
すべてのシナリオについて、許容度は7~14%にわたっていた。一方で、許容できないと回答した人の割合は、シナリオ別に4~7%にわたっており、腸がんスクリーニングに対する許容度が、乳がんおよび前立腺がんよりも有意に低かった。
また、50歳超の人の過剰検出に対する許容度が有意に低く、一方教育レベルが高い人ほど許容度が高かった。回答者のうち、以前に過剰検出について耳にしたことがあった人は29%であった。
(武藤まき:医療ライター)