緊急の外科的・侵襲的手技においてビタミンK拮抗薬(VKA)投与を必要とする患者について、4因子含有プロトロンビン複合体濃縮製剤(4F-PCC)の血漿製剤に対する、急速VKA中和および止血効果に関する非劣性と優越性が確認された。米国・マサチューセッツ総合病院のJoshua N Goldstein氏らによる第IIIb相の非盲検非劣性無作為化試験の結果、示された。VKAによる抗凝固療法は、緊急外科的・侵襲的手技を要する患者に関して迅速中和を必要とする頻度が高い。しかしこれまでその至適な手法について、臨床比較試験による確定は行われていなかったという。Lancet誌オンライン版2015年2月26日号掲載の報告より。
止血効果と急速INR低下の2つを主要エンドポイントに比較
研究グループは、4F-PCCの有効性と安全性を血漿製剤と比較して検討した。試験は国際多施設共同(33病院;米国18、ベラルーシ2、ブルガリア4、レバノン2、ルーマニア1、ロシア6)にて行われ、緊急外科的・侵襲的手技の前に急速VKA中和を必要とする18歳以上の患者を登録した。
患者を、VKA投与と共に4F-PCC(Beriplex/Kcentra/Confidex;ドイツ・CSLベーリング社製)または血漿製剤を単回投与する群に1対1の割合で無作為に割り付けた。投与量は国際標準化比(INR)と体重に基づき調整した。
主要エンドポイントは2つで、止血効果と急速INR低下(投与後0.5時間時点で1.3以下)。
解析は、最初に両エンドポイントについて非劣性(両群差の95%信頼区間[CI]下限値が-10%超と定義)を評価し、次いで非劣性が認められた場合に優越性(同0%超と定義)を評価した。
有害事象と重篤有害事象は、それぞれ10日時点、45日時点まで報告された。
いずれのエンドポイントも4F-PCCの非劣性、優越性を確認
181例の患者が無作為に割り付けられた(4F-PCC群90例、血漿製剤群91例)。有効であったintention-to-treat比較集団は168例(それぞれ87例、81例)であった。
止血効果が認められたのは、4F-PCC群78例(90%)に対し血漿製剤群61例(75%)で、4F-PCCの血漿製剤に対する非劣性および優越性が確認された(両群差14.3%、95%CI:2.8~25.8%)。
また、急速INR低下を達成したのは、4F-PCC群48例(55%)に対し血漿製剤群8例(10%)で、こちらについても4F-PCCの血漿製剤に対する非劣性および優越性が確認された(両群差45.3%、95%CI:31.9~56.4%)。
4F-PCCと血漿製剤の安全性プロファイルは類似していた。有害事象の発現は4F-PCC群49例(56%)、血漿製剤群53例(60%)であった。とくに注目された有害事象は、血栓塞栓イベント(4F-PCC群6例[7%] vs. 血漿製剤群7例[8%])、輸液過剰または関連心イベント(3例[3%] vs. 11例[13%])、遅発性出血イベント(3例[3%] vs. 4例[5%])であった。
(武藤まき:医療ライター)