手術非適応の重症大動脈弁狭窄(AS)に対する経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)vs. 標準治療を検討した無作為化試験PARTNER1の5年アウトカムが、米国・クリーブランドクリニックのSamir R Kapadia氏らにより報告された。TAVRの有益性が示され、著者は、非手術適応患者の生存および機能を改善するためにTAVR施術の検討を強化すべきであると提言している。また、患者の適切な選択により、TAVRの有益性を最大限に引き出すことになり、重篤な併存疾患による死亡を抑制することにもつながるだろうと述べている。すでにPARTNER試験の早期評価の結果で、TAVRが重症AS患者で手術非適応の患者について忍容性のある治療であることは報告されているが、より長期の臨床アウトカムに関する情報は限定的であった。Lancet誌オンライン版2015年3月15日号掲載の報告より。
TAVR群vs. 標準治療の無作為化試験PARTNER
PARTNER試験は、カナダ、ドイツ、アメリカの経験症例豊富な21ヵ所の弁膜症治療センターで、重症AS患者をTAVR施術群または標準治療(バルーン大動脈弁形成施術を含む)群に無作為に割り付けて行われた。
主要アウトカムは、intention-to-treat分析による1年時点の全死因死亡率であった。本検討で研究グループは、事前規定の5年時点の評価を行った。
5年時点の全死因死亡リスク、TAVR群71.8%、標準治療群93.6%
2007年5月11日~2009年3月16日に3,015例に対してスクリーニングが行われ、試験には358例が登録された(平均年齢83歳、STS[Society of Thoracic Surgeons]死亡予測リスク11.7%、女性54%)。179例がTAVR群に、179例が標準治療群に無作為に割り付けられた。なお20例が標準治療群からクロスオーバーされ、10例は試験を中断したが、5年時点で離脱していたのは6例のみであった。そのうち5例は、試験外で大動脈弁置換術を受けていた。
結果、5年時点の全死因死亡リスクは、TAVR群71.8%、標準治療群は93.6%で、TAVR群の有意な半減が認められた(ハザード比[HR]:0.50、95%信頼区間[CI]:0.39~0.65、p<0.0001)。
5年時点のNYHA心機能分類1または2の患者は、TAVR群の生存者49例のうち42例(86%)に対し、標準治療群は同5例のうち3例(60%)であった。
TAVR後の心エコーで、良好かつ永続的な血行動態が認められた(5年時の大動脈弁口面積1.52cm
2、平均弁圧較差10.6mmHg)。置換弁の構造的な劣化はみられなかった。
(武藤まき:医療ライター)