動脈硬化性疾患、またはそのリスクがある患者で非心臓手術が予定されている患者について、術前にCT冠動脈造影を行うことで、心血管死や術後30日以内の非致死的心筋梗塞発症リスクの予測能が高まることが示された。しかし同時に、そうしたイベントを発症しない人についても、ハイリスクと過剰評価してしまう傾向があることも示された。カナダPopulation Health Research InstituteのTej Sheth氏らが、955例の患者について行った前向きコホート試験で明らかにした。BMJ誌オンライン版2015年4月22日号掲載の報告より。
CT冠動脈造影の結果を4分類
検討は、8ヵ国、12ヵ所の医療機関を通じて、動脈硬化性疾患またはそのリスクがあり、非心臓手術を受けた955例の患者を対象に行われた。
被験者に対し、術前にCT冠動脈造影を行い、その結果を(1)正常、(2)非閉塞(狭窄50%未満)、(3)閉塞(1枝または2枝で狭窄50%以上)、(4)広範囲閉塞(冠動脈左前下行枝近位部を含む2枝、または3枝、もしくは左冠動脈主幹部で狭窄50%以上)の4つに分類した。結果については、左側主要疾患が疑われた場合を除き、医師には伝えなかった。
主要評価項目は、術後30日間の心血管死と非致死的心筋梗塞の複合アウトカムだった。なお、これらを従属変数として、また改訂版心リスク指標(revised cardiac risk index:RCRI)のスコアとCT冠動脈造影の所見を独立変数としてCox回帰分析で評価した。
非発症者の約1割について「ハイリスク」と過剰評価も
主要アウトカムは74例(8%)の患者で発生した。
RCRIスコアやCT冠動脈造影の所見を加えた予測モデルの検討で、CT冠動脈造影は、独立した予後予測を提供可能であることが示された(p=0.014、C統計量:0.66)。補正後ハザード比は、非閉塞群が1.51(95%信頼区間:0.45~5.10)、閉塞群2.05(同:0.62~6.74)、広範囲閉塞群が3.76(同:1.12~12.62)だった。
RCRIスコアのみの予測モデルに比べ、CT冠動脈造影の所見を加味したモデルを用いることで、主要アウトカム発生の30日間のリスクカテゴリ(5%未満、5~15%、15%超)が再分類でき、予測が改善されることが示された。具体的に、患者サンプル1,000例における主要アウトカム発症者77例のうち17例について、より適切なハイリスク群へと評価分類することができた(p<0.001)。
一方で同予測モデルでは、主要アウトカムの非発症者923例のうち98例についても、誤ってハイリスクと過剰に予測してしまった。
周術期の心筋梗塞を発症した人のうち、術前に冠動脈に広範囲閉塞が認められた人は31%、閉塞は41%、非閉塞は24%、正常だった人は4%だった。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)