死亡リスクが高い気温は?/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2015/06/05

 

 日本を含む世界13の国と地域の384地点で、1985~2012年の異常気温と死亡の関連を調べた結果、非至適温度による死亡は7.71%であり、その大半(7.29%)は低気温によるものであったことが明らかにされた。また、異常高温・低気温日の死亡への影響は中程度の異常気候による影響よりもかなり小さかったことも示された。英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のAntonio Gasparrini氏らによる報告で、「今回示されたエビデンスは、異常気温による健康への悪影響を最小とするための公衆衛生介入の立案に、またさらなる気候変動シナリオにおいて予測される影響に対して重要な示唆となる」と述べている。Lancet誌オンライン版2015年5月20日号掲載の報告より。

13の国と地域の気温と死亡の関連を分析
 これまでの検討で、高気温や低気温による早期死亡の推算は行われているが、気候が異なる地域の人たちを包括した系統的な評価は行われていなかった。そこで研究グループは、非至適気温による全死亡負荷を定量化し、また高気温および低気温、さらに中程度および極度の気温による全死亡負荷の相対的寄与の定量化を行った。

 オーストラリア、ブラジル、カナダ、中国、イタリア、日本、韓国、スペイン、スウェーデン、台湾、タイ、英国、米国の13の国と地域の384地点でデータを集めた。標準時間シリーズPoissonモデルを用いて各地域の傾向と曜日を補正した。

 21日間の分布ラグ非線形モデルで気温関連の死亡を推算し、それらを各国指標や平均気温および気温範囲などを含む多変量メタ回帰分析にプールして検討した。

 至適気温(最小死亡ポイントに一致させた)の上下気温で定義した高気温または低気温の死亡への寄与、また中程度および極度(2.5th~97.5th気温パーセンタイルのカットオフ値で定義)の気温の死亡への寄与を算出した。

非至適気温による死亡は7.71%、そのうち低気温が7.29%
 1985~2012年の種々の期間に発生した7,422万5,200例の死亡について分析した。

 全体で、非至適気温による死亡は7.71%(95%経験信頼区間[eCI]:7.43~7.91%)であった。国による差は大きく、タイの3.37%(同:3.06~3.63)から中国の11.00%(同:9.29~12.47)にわたっていた。日本は、10.12%(同:9.61~10.56%)であった。

 最小死亡の気温パーセンタイルは、熱帯地域ではおおよそ60thパーセンタイルであったが、温暖地域では約80~90thパーセンタイルであった。日本は86thパーセンタイルであった。

 気温関連の全体の死亡率は、高気温(0.42%、95%eCI:0.39~0.44)よりも、低気温(7.29%、同:7.02~7.49)のほうがより多かった。日本の高気温による死亡率は0.32%(同:0.27~0.36%)、低気温は9.81%(同:9.32~10.22%)であった。

 極度の低気温や高気温による全体の死亡率は、0.86%(0.84~0.87)にすぎなかった。

(武藤まき:医療ライター)