188ヵ国を対象とした世界の疾病負担研究(Global Burden of Disease Study)2013の結果、世界的に高齢者人口が増加しており、また高齢者ほど疾患や外傷の後遺症を持つ人の割合が増加していることが判明した。米国・Institute for Health Metrics and EvaluationのTheo Vos氏らGlobal Burden of Disease Study 2013研究グループが、1990~2013年の188ヵ国の医療データをシステマティックに分析した結果、明らかになった。Lancet誌オンライン版2015年6月7日号掲載の報告より。
301の疾患・外傷と2,337の後遺症について分析
世界疾病負担研究2013では、1990~2013年に188ヵ国を対象に、3万5,620のデータを基に、301の急性・慢性疾患や外傷と2,337の後遺症について、その発生率や罹患率、障害生存年数(YLD)などを分析した。
共存症シミュレーションにより、国や年、年齢、性別による後遺症数の予測を行った。
その結果、外傷や疾患の発生率・罹患率は高く、後遺症の認められない人の割合は低いことがわかった。共存症は年齢とともに、また1990~2013年にかけて増加していた。
急性後遺症(acute sequelae)の発生は、感染症と短期外傷によるものが大部分を占め、2013年には上気道感染症と下痢症が20億件に上った。さらに同年には、永久歯う蝕による歯の痛みの発生件数が2億件だった。
一方、慢性後遺症(chronic sequelae)の多くは非伝染病で、無症候性永久歯う蝕が24億件、緊張性頭痛が16億件だった。
YLD要因の上位は腰痛と大うつ病性障害
YLDは男女ともに人口および加齢とともに増大し、1990年は5億3,760万年だったが2013年には7億6,480万年となっていた。一方で年齢調整罹患率は114.87/1,000人から110.31/1,000人とほとんど減少していなかった。
YLDの主な要因としては、全調査対象国で腰痛と大うつ病性障害が上位10位に入っていた。また、YLD率(各人の生存に占めるYLDの割合)増大の主な原因は、筋骨格系、精神および薬物乱用障害、神経障害、慢性呼吸器疾患だった。サハラ以南のアフリカではHIV/AIDSがYLD増加の顕著な要因だった。
また世界的に障害調整生存年数の占める割合は、1990年の21.1%から、2013年の31.2%に上昇していた。
著者はこれら結果について、「世界人口の高齢化とともに、疾患や外傷の後遺症を有する人が増えている。YLD率は死亡率よりもゆっくりとした上昇だが、健康システムにおいてはますます、非致死的疾患および外傷への注意が必要である。とくにサハラ以南アフリカ以外の地域では、疾病負担は非致死的疾患および外傷によるものへと移行しつつある」とまとめ、「これらの結果は、疫学的動向調査や各国間の差への理解を深めることで、今後の健康イニシアチブを導くものとなるだろう」と述べている。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)