発作性心房細動へのカテーテルアブレーションにおいて、肺静脈隔離術後にアデノシンを投与し休止伝導部位を特定することが、無不整脈生存を改善する安全で非常に効果的な戦略であることが明らかにされた。カナダ・モントリオール大学のLaurent Macle氏らが、国際多施設無作為化優越性試験ADVICEの結果、報告した。著者は、「本アプローチを、臨床でルーチンとすることを検討すべきである」とまとめている。心房細動へのカテーテルアブレーションは増大しているが、不整脈再発の頻度が高い。アデノシンの投与は、休止伝導部位(dormant conduction)を明らかにし、伝導再発(reconnection)リスクのある肺静脈を特定可能である。それにより心房細動アブレーションの追加部位が導かれ、無不整脈生存が改善できるのではないかと見なされていた。Lancet誌オンライン版2015年7月23日号の掲載報告。
心房細動患者をアデノシン誘導追加アブレーション群と非追加アブレーション群に割り付け
試験は、オーストラリア、ヨーロッパ、北米の18病院で行われた。過去半年に少なくとも3回の症候性心房細動を有し、抗不整脈薬治療が無効であった18歳以上の患者を登録した。
肺静脈隔離術後にアデノシンを静脈内投与。休止伝導部位が認められた患者を、追加の心房細動アブレーションを行う(アデノシン誘導による追加アブレーション)群と行わない(非追加アブレーション)群に1対1の割合で無作為に割り付けた。休止伝導部位が認められなかった患者は、無作為に選択してレジストリ(非休止伝導部位レジストリ)群に包含した。患者は治療割り付けについて知らされず、アウトカムの評価はマスキングされた判定委員会により行われた。
追跡期間は1年間。主要アウトカムは、単回アブレーション後の症候性の心房頻脈性不整脈発生までの期間で、intention-to-treat解析で評価した。
アデノシン誘導追加アブレーション群の心房細動患者の不整脈再発ハザード0.44
2009年10月~2012年8月に、心房細動患者550例が登録され、534例について肺静脈隔離術後のアデノシン投与が行われた。それにより休止伝導部位の出現が認められたのは284例(53%)で、アデノシン誘導追加アブレーション群に147例、非追加アブレーション群に137例が無作為に割り付けられた。
症候性心房頻脈性不整脈が未発生であった心房細動患者は、非追加アブレーション群58例(42.3%)に対して、アデノシン誘導追加アブレーション群は102例(69.4%)であった。アデノシン誘導追加アブレーション群の絶対リスクの減少は27.1%(95%信頼区間[CI]:15.9~38.2、p<0.0001)、ハザード比は0.44(同:0.31~0.64、p<0.0001)であった。
一方、非休止伝導部位レジストリ群には115例が包含され、そのうち症候性心房頻脈性不整脈が未発生であったのは64例(55.7%)であった(非追加アブレーション群との比較のp=0.0191)。
重篤有害事象の発生は、各群で同等であった。死亡は1例(広範囲の血栓症)で、レジストリ群の患者であり心房細動アブレーションと関連していると考えられた。