転移性前立腺がん治療について、アンドロゲン除去療法(ADT)単独よりも、ADT開始時にドセタキセルを6サイクル併用することで、全生存期間が有意に延長することが明らかにされた。米国ダナ・ファーバーがん研究所のChristopher J. Sweeney氏らが報告した。ADTは1940年代から転移性前立腺がんの治療の柱となっているが、患者への治療負荷の問題、また治療抵抗性が多く発生するなどの課題があり模索が続けられてきた。化学療法+ADT併用の先行研究では、有益性は示されなかったが、小規模の低腫瘍量患者を対象とした検討であったことから、今回研究グループは、高腫瘍量と低腫瘍量に層別化した前向きの検討を行い、ADT単独よりもADT+ドセタキセル併用のほうが、生存期間が延長するのかについて評価した。NEJM誌オンライン版2015年8月5日号掲載の報告より。
患者790例を対象に、併用群の全生存期間延長が3割増しであるかを検証
検討は2006年7月~2012年12月に、総計790例の転移性ホルモン感受性前立腺がん患者を対象に行った。被験者を2群に無作為に割り付けて、ADT+ドセタキセル(75mg/m
2体表面積を3週ごとに6サイクル投与)またはADT単独の投与を行った。
試験の主要目的は、単独群よりも併用群の患者の全生存期間中央値が33.3%延長するとの仮定を検証することであった。
併用群の死亡に関するHRは0.61
被験者790例は、ADT単独群に393例、併用群に397例が無作為に割り付けられた。全体で、年齢中央値は63歳、約70%が腫瘍パフォーマンスステータスについてECOGスコア0、約65%が高腫瘍量、約60%がGleasonスコア(範囲:2~10、高値ほど増悪しており予後不良)8以上だった。追跡期間中央値は28.9ヵ月であった。
結果、全生存期間の中央値は、ADT単独群(44.0ヵ月)よりも併用群(57.6ヵ月)が有意に13.6ヵ月延長した。併用群の死亡に関するハザード比(HR)は0.61(95%信頼区間[CI]:0.47~0.80、p<0.001)。
生化学的、症状およびX線所見で確認した進行までの期間中央値は、併用群20.2ヵ月に対してADT単独群は11.7ヵ月であった(HR:0.61、95%CI:0.51~0.72、p<0.001)。
12ヵ月時点でPSA値0.2ng/mL未満であった患者は、併用群27.7%に対してADT単独群は16.8%だった(p<0.001)。
なお併用群でみられた有害事象として、グレード3/4の発熱性好中球減少症が6.2%、グレード3/4の好中球減少症を伴う感染症が2.3%、いずれもグレード3の感覚系神経障害および運動系神経障害が0.5%が報告されている。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)