たこつぼ心筋症の患者は、その9割弱が女性で、神経・精神障害の有病率は約6割と急性冠症候群(ACS)に比べ有意に高率であることが明らかになった。スイス・チューリッヒ大学病院のC. Templin氏らが、欧州・米国の協同によるたこつぼ患者レジストリからの患者1,750例と、急性冠症候群のマッチング患者について行った試験の結果、判明した。たこつぼ心筋症の経過やアウトカムについては十分に解明されていなかった。NEJM誌2015年9月3日号掲載の報告より。
欧米レジストリ1,750例とACS患者を適合比較
研究グループは、欧州・米国26ヵ所の医療機関コンソーシアム「国際たこつぼレジストリ」から、たこつぼ心筋症の患者と、年齢や性別をマッチングした急性冠症候群患者について比較し、その臨床的特徴やアウトカムを分析した。
たこつぼ心筋症患者1,750例のうち、89.8%が女性で、平均年齢は66.8歳だった。
トリガーは身体的ストレス36%、感情的ストレス28%
たこつぼ心筋症の要因(トリガー)としては、身体的ストレスが36.0%と、感情的ストレスの27.7%より高率だった。一方、28.5%で明らかなトリガーが認められなかった。
また、たこつぼ心筋症の患者は、神経障害や精神障害の有病率が55.8%と、ACS患者の同25.7%と比べ、有意に高率だった(p<0.001)。さらに、たこつぼ心筋症患者の平均左室駆出率は40.7%(標準偏差:11.2)と、ACS患者の51.5%(同:12.3)に比べ、有意に低率だった(p<0.001)。
ショックや死亡といった重度院内合併症の発生率は、両群で同等だった(p=0.93)。院内合併症の独立予測因子としては、入院時の身体的トリガー、急性神経・精神疾患、トロポニン値上昇、左室駆出率低下が挙げられた。
なお、たこつぼ心筋症患者の長期追跡期間内の、主要有害心・脳血管イベントの発生率は9.9%/患者年であり、全死因死亡率は5.6%/患者年だった。
結果について著者は、「急性心不全症候群の罹患率、死亡率が相当なものであることを示すものだ」と述べている。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)