思春期うつ病、パロキセチンとイミプラミンの試験を再解析/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2015/10/02

 

 思春期大うつ病に対して、パロキセチンおよび高用量イミプラミンはいずれも有効性は示されず、有害性を増大することが明らかにされた。英国・バンガー大学のJoanna Le Noury氏らが、「SmithKline Beecham's Study 329」の再解析の結果、報告した。BMJ誌オンライン版2015年9月16日号掲載の報告。

SmithKline Beecham's Study 329のプライマリデータを引き出し再解析
 無作為化試験に関しては、試験データの大半にアクセスできず偏向報告の検出を困難なものとしている。また、ミスリードの結論が発表されても、プライマリデータへのアクセス不可が、それを確定的なものと思わせている。

 研究グループは、思春期大うつ病に対するパロキセチンおよびイミプラミンの有効性、安全性をプラセボと比較した「SmithKline Beecham's Study 329」(2001年にKeller氏らにより発表)も、そうした試験の1つだとして、「RIAT(restoring invisible and abandoned trials)イニシアチブ」に基づく再解析を行った。無作為化試験の完全データセットへのアクセスが可能かを確認し、また再解析の結果が、根拠に基づく医療として臨床的意義があるのかを検証した。

 GSK社に対してRIATレコメンデーションや交渉を行い、Webサイトで入手可能となったファイナル臨床報告などのデータを用いて再解析を行った。

 被験者は、北米12ヵ所の大学附属の精神科センターで、1994年4月20日~98年2月15日に集められたオリジナル試験の青年275例であった。被験者は12~18歳で、少なくとも8週間の大うつ病を有していた。除外基準は、精神障害や内科的疾患の併存、および自殺傾向であった。

 二重盲検無作為化プラセボ対照法により、被験者は、パロキセチン(20~40mg)、イミプラミン(200~300mg)またはプラセボの8週投与を受ける群に無作為に割り付けられ評価を受けた。

 事前規定の主要有効性変数は、ベースラインから8週時点(急性期治療フェーズ終了時)までの、ハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)総スコア、治療反応者の割合(HAM-Dスコア8以下またはベースライン時HAM-Dスコアより50%低減)の変化であった。また事前規定の副次アウトカムは、ベースラインから終了時までの、K-SADS-Lのうつ評価項目、臨床全般印象度(CGI)、自律機能性チェックリスト、自己知覚尺度、SIP(sickness impact scale)の変化、および反応性予測因子、さらに維持フェーズ期間における再発患者数であった。また有害経験について、主として記述的統計を用いて比較を行った。コーディングについては事前規定されていなかった。

プライマリデータおよびプロトコルによる分析の必要性を例示する結果に
 結果、パロキセチンとイミプラミンの有効性は、あらゆる事前特定の主要アウトカムおよび副次有効性アウトカムについて、プラセボと比較して、統計学的または臨床的な有意差は示されなかった。

 HAM-Dスコアは、パロキセチン群10.7ポイント低下(最小二乗法による平均値、95%信頼区間[CI]:9.1~12.3)、イミプラミン群9.0ポイント低下(7.4~10.5)に対して、プラセボ群9.1ポイント低下(7.5~10.7)であった(p=0.20)。

 一方、臨床的に顕著な有害性の増大が、パロキセチン群では自殺念慮や自殺行動およびその他の重大有害事象についてみられ、イミプラミン群では心血管の問題についてみられた。

 これら再解析の結果を踏まえて著者は、「パロキセチン、高用量イミプラミンの両者とも、思春期大うつ病への有効性は示されなかった。また両薬で有害性の増大が認められた」と結論している。そのうえで、「試験のプライマリデータへのアクセスは、発表済みの有効性および安全性に関する結論を盲目的に信ずるべきではないなど、臨床および研究のいずれにとっても重大な意義をもたらすものである。今回のStudy 329の再解析は、エビデンスベースの厳密さを増すためにプライマリ試験データやプロトコルを入手することの必要性を例示するものであった」と述べている。

(武藤まき:医療ライター)